リム・カーワイ監督をキュレータ―に迎えてリニューアルした「台湾文化センター 台湾映画上映会」。その第3回が6月29日、台湾文化センター(東京・港区虎ノ門)で開かれた。今回上映されるのが台湾でもあまり知られていない幻の作品とあって、多くのファンが詰めかけた。上映後に行われたトークイベントの模様をレポートする。(#1#2を読む)

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台湾映画とは思えない台湾映画

 この日上映されたのは、1997年製作の『逃亡者狂騒曲 デジタルリマスター版』。トークイベントには、同作の監督、ワン・チャイシアン(王財祥)監督がオンラインで、会場にはPFF(ぴあフィルムフェスティバル)ディレクターの荒木啓子さんが登壇した。

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『逃亡者狂騒曲』

台北に住む若いダンサーは、ニューヨークでダンサーになることを夢見ている。ある日、猟奇殺人を目撃してしまったことで、彼は漫画家兼殺し屋から追われる立場になってしまう。CM界で著名な演出家が世紀末の虚無感を荒々しい実験的なスタイルで捉えた、知る人ぞ知る“伝説の映画”。1997ベルリン国際映画祭フォーラム部門選出、1997アジア太平洋映画祭最優秀撮影賞、編集賞、音響効果賞受賞。

監督:ワン・チャイシアン/出演:チェン・ホンレン、ルー・シンユー/1997年/台湾/83分/©FOUNTAIN FILMS CO. All Rights Reserved.

リム・カーワイ(以下、リム) この『逃亡者狂騒曲』は97年に作られた当時にベルリン映画祭で上映されたんですが、荒木さんはそこで観たそうですね。

台湾版ポスター ©FOUNTAIN FILMS CO. All Rights Reserved.

荒木啓子(以下、荒木) 矢口史靖監督の『ひみつの花園』をベルリンに持って行ったときです。ぴあフィルムフェスティバルは無名の頃からホウ・シャオシェン監督作を上映したり、台湾映画をよく紹介していたんです。でもこの『逃亡者狂騒曲』は台湾映画と思いませんでした。アメリカなど外国にいた人が台湾で撮ったのでは?と思いました。

リム ホウ・シャオシェンとかエドワード・ヤンといった台湾映画のイメージとはまったく違いますからね。