リム・カーワイ監督をキュレータ―に迎えてリニューアルした「台湾文化センター 台湾映画上映会」。今年の最終回となる第7回が10月18日、台湾文化センター(東京・港区)で開かれた。全裸のベトナム人青年が警察官によって銃で撃たれ昏倒する生々しい映像が収録されたドキュメンタリー作品に、観客も強い衝撃を受けた様子だった。
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この日上映されたのは2022年製作の『9発の銃弾』。上映後のトークイベントには、本作のツァイ・チョンロン監督がオンラインで、会場には技能実習生として来日したベトナム人女性たちの過酷な日々を描いた『海辺の彼女たち』が高く評価された藤元明緒監督が登壇した。
『9発の銃弾』
2017年8月、出稼ぎ労働者のベトナム人青年が、警官が撃った9発の銃弾により死亡した。彼を殺したのは9発の銃弾だけなのか。実際の事件映像やインタビューを交え、真実に迫っていく。台湾の出稼ぎ労働者の現状と台湾社会の歪みを如実に伝えた本作は、2023年金馬奨で最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞した。監督:ツァイ・チョンロン/2022年/90分/台湾/©️2022 Twinflows Production
近づいて銃の引き金を引く警察官。そして――
【『9発の銃弾』が衝撃的なのは、ベトナム人青年を撃った警官が身に着けたボディカメラの映像が全編にわたって紹介されていることだ。緊張した様子の警察官の前に、草むらから飛び出す全裸の男。彼は警察官の制止の声を無視して無人のパトカーに乗り込もうとする。近づいて銃の引き金を引く警察官。銃撃音は9回。パトカー脇に倒れこむ男。一部画像処理はしているが、噴き出した血も見える。男が身体を動かしていることで、近づくこともなく警戒を続ける警察官たち――。】
ツァイ・チョンロン監督(以下、ツァイ) この作品を日本で観ていただけてとても光栄です。この作品を台湾で上映したときも、気分が悪くなる人がたくさんいました。日本でも気分が悪くなられた方がおられるかもしれませんが、この事件は、いま台湾が抱えている外国人労働者問題を反映しています。台湾も日本も同じだと思いますが、労働者が不足していて、それを外国人に頼っていますが、制度に非合理的な問題があり、それを取り上げることがこの映画の目的です。
藤元明緒(以下、藤元) ひじょうに興味深く拝見しました。やはりボディカメラの映像が、率直に言ってとてもヘビーでした。何回も見るのを止めようと思ったくらいです。