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台湾警察がボディカメラを身に付けるワケ

リム・カーワイ 日本では警察のボディカメラは普及していませんから、この点では台湾のほうが進んでいますね。

藤元 しかもこの映画にそれが使われているのがすごい。

ツァイ 日本では警察がボディカメラを使っていないと聞いて驚きました。台湾で警察官がボディカメラを装着しているのは、批判を受けた際に警察はやり過ぎてはいないと説明するためなんです。つまり、警察を守るために使われている。この5年くらいでニュースでも流れるようになりました。たしかに映画にして上映することを心配する人もいましたが、この映像は著作物ではないので、著作権に触れることはありません。訴えられる可能性はありましたが、私はこれは人権問題であり、公共の利益に関わることなのでこの映像は公開すべきであると考えました。今のところ私は訴えられていません。この映像をどう入手したかについては、司法関係の人から、としか言えません。

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ツァイ・チョンロン監督

外国人労働者問題への関心

【銃で撃たれた男は、地面に伏して力なく石をつかんで放ることしかできない。映像には、言葉が通じないためか、男を制圧せず十数分にわたり遠巻きにする警官の様子が残されていた。銃撃からかなり時間が経った後に病院に運ばれた男は、死亡。ベトナム人遺族は撃った警官を訴えたが、後に和解した。映画はベトナムの遺族のもとを訪ね、死んだ青年の人物像に迫っていく。心優しく詩を書いた青年が、不法就労者となり、麻薬や犯罪に手を出してしまったのはなぜなのか。】

『9発の銃弾』 ©2022 Twinflows Production

藤元 あのボディカメラ映像が何度も挿入されることで、観客はこの映像から、事実をどう見るのか迫られている映画だと感じました。日本でもかなり近しいことが起きていると思っています。監督は以前から外国人労働者問題に関心があったんでしょうか。

ツァイ 私はかつてテレビ局に勤めていて、ベトナムから台湾に嫁いでくる女性のドキュメンタリーを作りました。その後、ベトナム人の女性と結婚をしてベトナム人の友だちもできると、当たり前ですが文化は違っても、同じ人間なわけですよね。その中でこの事件を知りました。警察官を悪い人ととらえる報道もありましたが、必ずしもそういうことではないとも思い、この映画を作ったわけです。