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藤元 台湾で起きた事件だけでなく、ベトナムの遺族のパートがあって、そのコントラストがよかったと思います。

ツァイ 台湾でのボディカメラの映像では、彼は人ではないような扱いを受けています。しかしベトナムで遺族を取材したり、彼が書き残したものを元に、死んだ彼の魂の視線から見ていくようなシーンをつくりました。そのことで外国人労働者と呼称される彼が、実際にはどんな人だったのか、どういう生活をしていたのかを皆に見てもらいたいと思ったのです。

作品を見た台湾人たちの感想は……

【観客から台湾での反応について質問が出ると、監督はこう答えた。】

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ツァイ 台湾ではショックを受ける人が多かったです。どうして撃たれた彼を誰も助けようとしないのかと。台湾に外国人労働者に対する差別があるとは認めない人が多いように思います。無視しているというか、別の世界の住人であるかのような感覚でいる。この映画は、そんな別の世界を目の前に突きつける映画です。日本で暮らす知人に聞くと、日本の外国人労働者にも逃げてしまう人がいるそうですね。技能研修生といいながら、実際には安価な労働力として彼らを使ってきた。それは台湾も同じです。

藤元監督(左)とツァイ監督(画面) ©文藝春秋

藤元 今年法律が通って、技能実習制度がなくなり、今後育成就労という制度に変わっていきますが、いったいどうなるのか。この問題は見続けていきたいと思います。

 最後に台湾映画の魅力について聞かれると、

藤元 台湾映画には親近感がわきますね。行ったことがないのに、同じ原風景を見ているような気がします。

ツァイ 台湾の映画は華人の世界の中ではいちばん創作の自由、表現の自由があるといえます。そして多元な表現を持っている。台湾は80年代のホウ・シャオシェンの時代から、現在の様々な若い作り手の作品、海外からもいろいろな作家が来て映画をつくっていて、魅力的な作品がたくさんあります。同じアジアの国として、日本とは文化的な共通点もある台湾映画をぜひたくさんご覧になってください。