リム・カーワイ監督をキュレータ―に迎えてリニューアルした「台湾文化センター 台湾映画上映会」。その第5回が8月25日、台湾文化センター(東京・港区)で開かれた。

 累計100万部を突破、2年連続でベストセラー1位となった大人気インターネット小説「一杯熱奶茶的等待」を、約20年の時を経て著者のジャン・フーホアが自らの脚本・監督で映画化した。アイドルグループSpeXialの元メンバーのサイモン・リアン、エレン・ウー、アレックス・チョウら新世代台湾アイドルの出演も話題。(全5回の5回目/#1#2#3#4を読む)

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 この日上映されたのは2021年製作の『ミルクティーを待ちながら』。トークイベントには、本作のジャン・フーホア監督がオンラインで、会場にはWEBメディア「Howto Taiwan」編集長の田中伶さんが登壇した。

『ミルクティーを待ちながら』台湾版ポスター ©️Mandarin Vision Co., Ltd.

『ミルクティーを待ちながら』

バレンタインデーの寒い夜。美術大生のシャオホア(エレン・ウー)は、学生寮の前で恋人の帰りを待つアウェン(アレックス・チョウ)を見かけ、自販機で缶の熱いミルクティーを買って手渡し親しくなる。アウェンの恋人が二股をかけていると思ったシャオホアが、その相手ズージエ(サイモン・リアン)に忠告したことから、2人の距離が縮まっていく。次第に心を寄せ合うズージエとシャオホアだったが、それぞれ心に傷を負っていた。監督:ジャン・フーホア/出演:サイモン・リアン、エレン・ウー、アレックス・チョウ/2021年/台湾/114分/©️Mandarin Vision Co., Ltd.

止まっていた世界が再び動き出す

田中伶さん(以下、田中) こんなに寒そうな台湾映画は初めてでした。タイトルや予告編から、胸キュン・トキメキ・ラブストーリーかと思っていたら、意外と人に見せたくない心の中のことが描かれていたり、事件も次々に起きる。すごく繊細な作品だと思いました。フーホア監督が原作の小説を書かれたのは2001年のことだそうですが、なぜ20年の時を経て映像化されたのでしょうか。

ジャン・フーホア監督(以下、フーホア監督) 小説を書いたのは私が大学4年生の時から卒業までの間でした。その後、私は映像の仕事をするようになり、脚本を書いたりしていました。『ミルクティーを待ちながら』はとても人気のあった小説でしたので、映像化したいという話をいくつもいただいていました。けれど、映像化に対処するにはまだ私自身が未熟だと思っていて、断ってきたのです。そして、コロナ禍の時期になり、世界がまるで止まってしまったようになりました。その時私は別の作品を作ろうとしていたのですが、それもストップしてしまった。

ジャン・フーホア監督

 そんなときに『ミルクティーを待ちながら』の話が出たんです。小説を書いてから20年が経ったけれど、この小説に出てくるのはみんな、何かを待っている人。これからどんな道を進んでいくか考えていたり、過去と決別して生まれ変わりたいと思ったり、人生の節目にある。その時、コロナで世界が止まってしまって、再び動き出すのをみんな待ちわびていました。再び世界が動き出す温かい物語を、今こそ映画にしたいと思ったのです。