悲しみを表に出さないで笑顔を作る難しい役柄

リム・カーワイ監督(以下、リム) キャスティングについても聞きたいですね。

田中 ズージエ役のサイモン・リアンは本心を見せずににこにこ笑っている感じがぴったりですね。

フーホア監督 そうですね。ズージエを演じたサイモンはアイドルをしていて、これが初めての映画出演でした。映画の中と実際の彼はあまり共通点はありません。けれど、ズージエは心の中の悲しみを表に出さないで笑顔を作っています。サイモンも自分では意識していなくても、笑顔の底に何かがあるような、複雑な心情を感じさせる人でした。それで彼を起用したんです。なかなか演じるのに難しい役柄でしたから、役作りについて彼とずいぶん話をしました。ヒロインを選ぶのには、多くの女優と面接をしました。エレン・ウーと会ったとき、彼女の内に悲しみをたたえているような佇まいに惹かれました。

ADVERTISEMENT

 観客からは、なぜコーヒーやお茶ではなく、ミルクティーだったのかと質問が出た。

『ミルクティーを待ちながら』 ©️Mandarin Vision Co., Ltd.

フーホア監督 もとの小説の7割くらいには実際にモデルがいました。温かいミルクティ―を傷ついている人に渡すことで、自分も救われるというのは、私自身の経験です。そういうことが実際にあって、私は小説を書き始めたのです。なぜミルクティーかというと、そういうことが実際にありましたし、当時私がよく飲んでいたからです。コーヒーと違って苦みがなく、甘みがあって、幸せな気持ちになれますよね。

どんな人でも受け入れる寛容さ

リム 台湾映画の魅力を聞かせてください。

田中 私は台湾が大好き、台湾旅行が好き、台湾の人々が好きです。台湾映画を通して、台湾の人々や文化や習慣をリアルに知ることができます。『ミルクティーを待ちながら』では、バレンタインデーに対する台湾の人々の情熱がすさまじいことを知りました(笑)。こういう映画を観るとロケ地に行きたくなりますし、台湾に行くとまた映画を観たくなります。

フーホア監督 台湾の魅力、台湾人の魅力は、どんな人でも受け入れる寛容なところだと思います。台湾映画は形式はさまざまですが、身近な善良さを描いています。台湾の人々の実生活に近いところを描いている、それが台湾映画の魅力のひとつではないでしょうか。

INFORMATIONアイコン

『ミルクティーを待ちながら』の上映があります。

 あいち国際女性映画祭・海外招待作品
 9月5日(木)午後6時30分~
 ミッドランドスクエア シネマ2(名古屋市・名駅)にて
 詳しくは映画祭HP https://www.aiwff.com/2024/まで