インバウンド、などという言葉がまだ聞かれなかったずいぶん昔。関西国際空港、つまり関空が開港してまもない時期だっただろうか。関西国際空港などムダだ、作るおカネがもったいない、赤字の補填はどうするのだ、などという意見が跋扈していたような記憶がある。
確かに、開港直後の関空は赤字だったし、利用状況もそれほど芳しいものではなかったようだ。大阪の中心部から関空に向かう特急「はるか」や「ラピート」も、運行開始直後のご祝儀が終わればお客の数は低迷していた。大阪の人にしてみれば、もともと中心部から近くて慣れ親しんだ伊丹空港があるのだから、ちょっと離れた海に浮かぶ関空に親近感を抱けなかったのもうなずける。
ところが、である。いまとなっては、関空がムダなんて、とんでもないお話である。ひっきりなしに外国人観光客がやってきて、まさに堂々たる日本の空の玄関口としての役割を果たしている。当時のムダ論が的外れ、などとあげつらうつもりはない。未来のことなんてよくわからない、ということだ。
ともあれ、関西国際空港である。関空は、大阪市南部の海の上、自治体でいうならば泉佐野市・泉南市・田尻町の3市町に跨がる人工島の空港だ。今回やってきたのは関空そのものではなく、その根元。南海電車「ラピート」が駆け抜ける南海本線と南海空港線が分かれる、泉佐野駅である。
関西空港のすぐ根元…“ナゾのふるさと納税の駅”「泉佐野」には何がある?
泉佐野というと、ちょっと前にはふるさと納税を巡ってあれこれ話題を振りまいた。その是非はここでどうこうするものではないが、あの泉佐野と、関空(の根元)の泉佐野。言われてみれば、同じ町なのだ。
泉佐野駅には「ラピート」を含めて南海のすべての電車が停車する。「ラピート」の一部は堺も岸和田も通過するというのに、泉佐野だけには必ず停まる。本線と空港線の分岐駅だから、といえばそれまでの話。が、やはり泉佐野という駅、そして町がそれだけ大きな存在感があるということは間違いないだろう。
南海電車のターミナル・なんば駅から泉佐野駅は、「ラピート」に乗ってざっと30分。南海には他にも大阪と和歌山を結ぶ「サザン」という特急もある。「ラピート」は全車指定席で運賃の他に料金がかかるが、「サザン」は一部のみ指定席。つまり運賃だけで乗ることができて、なんば~泉佐野間の所要時間はほとんど同じ30分である。
ともあれ、南海電車に揺られて泉佐野駅に着いた。