7月22日、開会式の4日前、通しリハーサル中に音楽が流れ始めると、約150人のダンサーが拳を振り上げて動きを止めた。メディアでの収録・放映など、2次使用報酬の差についての抗議活動である。

 ダンサーの中には、断続的なスポット契約の者と、制作会社などと継続的な給与労働契約をしている者がいる。前者は60ユーロ(約1万円)であるのに対して、後者については雇用者との団体交渉が行われ1610ユーロ(約27万円)を支払うとしていた。オリンピック組織委員会は、労働協約などへの違反はなく、スポット契約のギャラも少し高くなっているとしている。

 組合ではこの日行動した者たちを含めた250人ほどが、本番でのストを表明しているという。7月26日の開会式本番を前に、フランスの高速鉄道TGVを狙った破壊行為も発生し、“騒動”が続いている。(取材・執筆:在仏ジャーナリストの広岡裕児氏)

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フランス芸能人労働組合 ルーシー・ソラン代表(FNNプライムオンラインより)

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マクロンが国会解散で台無しにした

 パリ・オリンピックの開幕まで2カ月を切った頃、パリのメトロの駅にはピンク色で会場の案内が掲示されるようになった。街の中にオリンピックとパラリンピックの垂れ幕もつけられた。仮設スタンドの準備も着々と進んだ。

メトロの会場案内のポスター

 しかし、話題はもっぱら6月9日の欧州議会選挙ばかりだった。

 投票も終わり、「さあこれからはオリンピックだ」と思ったら、突然マクロン大統領が日本の衆議院にあたる国民議会を解散してしまった。

 フランスでは首相が内政の責任者で、大統領は、国民議会の多数派政党または連立から首相を任命する。彼は誰にも相談せずに、数少ない大統領の専権事項である国会解散の伝家の宝刀を抜いた。

「無謀な賭け」「クレイジーな解散」と身内からも批判された。国民の目は否応なしに政治に向かい、オリンピックムードは下火になった。

オリンピックの垂れ幕

 政治評論家のギヨーム・タバール氏によれば、大会の準備は非常にうまく進み、称賛に値するものだった。ところが、「エマニュエル・マクロンは2024年パリ五輪も解散させてしまった」と述べていた。(6月27日「ル・フィガロWeb」)

メトロの駅が閉鎖、渋滞は緩和されない

 おまけにオリンピックの準備で、バカンス前の忙しい中、至るところで工事が行われ渋滞。工事が終わったと思ったら、実は自転車レーンの拡張だったため、一向に渋滞が緩和されない。ナビで抜け道を指示されても、皆そこへ集中するから役に立たない。遅々として進まぬ車の横を自転車が走っていく。

地下鉄1号線で閉鎖される駅

 地上だけではない。たとえば、ブレイキンやスケートボードなどの会場となるコンコルド広場ではメトロの駅が閉鎖になった。出入りができないだけではない。ここは町の要所でメトロが3線交差しているのだが、電車は止まらず乗り換えもできない。昨年のラグビー・ワールドカップでもコンコルド広場には、オフィシャルグッズのメガストアがあり、ファン・ゾーンもあった。だが、閉鎖されたのは、重要な試合がある日の午後から終電までだけだった。ところが、今回は何と6月17日から9月21日まで3カ月以上の閉鎖だ。