文春オンライン

「もうこの学校はダメだと思いましたね」愛する娘が13歳で自殺…先立たれた父が明かした「学校側の怠慢」「残酷いじめの中身」

『事件の涙』より #10

genre : ニュース, 社会

note

「教育委員会も学校も、会見で本当のことなんて言ってないですよ。そもそもサボったわけでもなく、ちゃんと事前に理由を話して顧問から許可をもらっていたんです。あと『上級生に謝らせたから解決していたと思っていた』と説明していましたけど、あれも嘘です」

 嘘に嘘を重ねる。よもや教育現場で起きたこととは信じられない。が、嘘は、そのまま真実かのごとく報道されていた。

〈自慢か〉

 同じ陸上部の先輩(3年生、女性)からメッセージが届いたのは、陽菜が例の沖縄の写真を投稿した直後のことだ。いや、違う。堪らず彼女は〈家族と来ているだけです〉と理由を説明した。

ADVERTISEMENT

〈それが自慢っていうんだよ〉

 夏休みだというのに練習に明け暮れていた他の部員たちは、陽菜が自惚れていると捉えたようだ。特にその先輩は、迫る大会に向けての追い込み期間で疲労困憊だったためか、陽菜に強い皮肉を放ったらしい。

 陽菜はスマホを手に怪訝な面持ちになる。洋はそれに気づいて娘に聞いた。

「何かあったの?」

 陽菜から先輩との一連のやり取りが聞かされたが、さして気には留めなかった。しかし、陽菜にとっては相当のダメージだったようで、以後は海にも入らなくなる。

 よもや、こんな些細なことからいじめが加速するとは、彼女自身、思ってもいなかっただろう。それは洋も同じだった。この沖縄旅行までは、少なくとも夏休み前の1学期までは、いじめの兆候など一切みられなかったのだ。

 洋は目尻を下げて言う。

「女の子だし可愛いでしょって言われると、うん、かつ面白い子って。物事の表現がとてもユニークで、例えば打ち上げ花火の音を、普通はバンって比喩するところ、陽菜はボッコンボッコンって言うんです。学校へは欠かさず行き、空手やピアノなどにも自ら率先して取り組んでいました。友達も少なくないほうだったと思います。ほんと、笑顔の陽菜しか知りませんでしたから」

 家族のアルバムには、陽菜の笑顔がたくさん収められていた。

突然部活で全員から無視されるように

 陽菜は2004年12月25日のクリスマスに3人兄妹の末っ子として生まれた。両親は初めての女児誕生に喜び、できる限りの愛情を注ぎ育てた。成績はさほど良かったわけではないが、運動神経が良く「とにかく足は速かった」と洋が言うように、中学に入ると陸上部に入部した。

「家では毎日、部活の話をしていました。記録はトップクラスで、同学年ではリーダー的な存在。周囲にうまく溶け込めていたようで、本人的にもこのまま頑張りたいと、いつも前向きでした」

 ところが、あの日から、陽菜に対する部員たちの態度は豹変する。洋が続ける。