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「もうこの学校はダメだと思いましたね」愛する娘が13歳で自殺…先立たれた父が明かした「学校側の怠慢」「残酷いじめの中身」

『事件の涙』より #10

genre : ニュース, 社会

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「沖縄から帰ったあとに部活に行くと、部員たち全員から無視されたと言うんですよ」

 件の先輩が主導する形でデタラメを吹き込み、陽菜と仲良しだった同級生を含む部員たちに彼女を無視するよう仕向ける。この提案を、みんなが受け入れたのではないかと洋は予想する。多くの部員が戸惑ったに違いない。しかし、練習を通じて叩き込んだ先輩後輩の上下関係はその先輩に有益に働き、結果、無視がSNSでの集団リンチへと推移したであろうことは推測がつく。同調圧力により、歯向かう者はいなかったのだ。

「真実はわからないけど、かなりつらかったんじゃないかな…」

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 異変に気づいた洋が陽菜に問い質すと、のちに娘の口からいじめの存在が語られた。

「もうこの学校はダメだと思いましたね」

 そしてある日、学校側と話し合いの場が持たれる。

「陸上部の顧問は、とりあえず本人に聞いてみるが『部内にそういう悪い生徒はいない』とシャットアウトするだけでした。陽菜は、行きはニコニコだったんですよ。これで解決すると思ったんじゃないですか。でも、これはダメだと感じたんでしょう。帰りはムスっとして口も聞いてくれませんでした」

 このあと、いじめは止まるどころかエスカレートしていく。ツイッターを利用した陽菜の吊るし上げが始まったのである。彼女へ向けられた憎悪はSNS上に偏在した。もう毎日のように。

 暗澹たる当時の思いを滲ませながら洋は言う。

「夕方、家族でご飯を食べてますよね。するとスマホにメッセージが届くんですよ。陽菜は『また来た』って言って不機嫌になる。あとから知ったんですけど、娘のアカウントが学校中に広まり、知らない人からも『クズ』とか暴言が届くようになったんです」

 

 鳴り止まないスマホのメッセージに両親は再び学校を訪ねるが、部活の顧問は話の途中で席を立ったまま戻らず。担任にしても、不登校の児童生徒向けの学校への転校を勧められるなど、教育者たちは目の前で起きている事態に目を背けるばかりで全く取り合わなかったそうだ。

「もうこの学校はダメだと思いましたね」

 洋が漏らしたあきらめに似た愚痴の真意を代弁するかのように、母・幸子は溢れ出る涙を隠そうともしない。2学期の中頃に陽菜は、ついに不登校になった。

(文中敬称略)

◆◆◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

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