「『のび太』のようないじめられっ子が長じて『ジャイアン』のように振る舞っているのが、今のイーロン・マスク」と語るのは、元Twitterジャパンの社長の笹本裕氏。実際に仕事をともにした彼だから語れる「イーロンの意外な人柄」とは? 新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

実際に仕事をともにしたパートナーだからこそわかる「イーロンの人柄」とは? ©getty

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 Twitter買収後の2022年末、イーロンは「自分がCEOを続けるべきか?」というアンケートをTwitter上で行いました。結果的に「続けるべきでない」という票が多く入ったのですが、実は本人はがっかりしていたのではないかと思います。

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 表向きには「こんなクレイジーな会社、他にできるやつがいたらいつでも譲ってやるよ!」と言っていましたが、本当は譲るつもりはなかったのではないか(結局その後、投票結果どおり新しいCEOを任命したのはご存じのとおりです)。

 イーロンには、こういう少年のような一面があったりするのです。意外に世間の反応を気にしている。私は「ああ、この人、あのアンケートを真剣にやっていたんだな」と思いました。

壮絶ないじめに遭っていた

 イーロンが幼少期、ものすごいいじめに遭っていたことは、評伝『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン/文藝春秋)でも詳細に描かれています。

 そうした経験が、彼に自分のなかで世界を妄想する癖をつけたのではないか、と私は勝手に考察しています。「のび太」のようないじめられっ子が長じて「ジャイアン」のように振る舞っているのが、今のイーロン・マスク。スペースXは言ってみれば、「元のび太が自分で作ってしまったドラえもん」なのです。

 彼は自分で「ドラえもん」を作り、「ジャイアン」のような力を手に入れた。だからやっぱり「のび太には戻りたくない」という気持ちを強く持っているのではないか。

 彼は自分の存在を脅かされると激しく戦います。批判されるのがすごく嫌いなのです。だからアメリカのメディアの取材は基本的に受け付けない。私が「少年のようだ」とか「気にしい」と言いたくなるのは、そこです。

 一見、イーロンのダメな部分やイヤな部分として捉えられそうなところが、本当に彼が「素直な少年」であるように思わせるのです。

 こんなこともありました。