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 そうしたなかで世界の登山界の評価軸は、「誰もやっていないこと」「誰も行ったことがないところ」という創造性に重きが置かれるようになっている。常に未踏の岩壁を追求し、そこで成果をあげてきた平出=中島コンビは、だからこそ何度もピオレドールを受賞することができたのだ。

 今回、そのふたりがターゲットに定めたのがK2西壁。冒頭に述べたように、いまだに人類が登り切ったことがない“未踏”を誇る掛け値なしの難壁だ。

平出和也さん

 標高差は2000m以上。傾斜が強く、クライミングの高い技術が必要なうえに、地形的に落石や雪崩のリスクが高く、それを避けるためにスピードも要求される。それを、酸素濃度が平地の3分の1ほどの8000m超の場所で行わなければいけないのだ。

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 これが登れたら、今年のピオレドールは文句なく確定という課題である。ふたりにとっても、これまでの限界を超えるパフォーマンスを見せないと登れない、大きなジャンプアップになることは間違いなく、そのために6年以上も計画をあたためてきた。

中島健郎さん ©時事通信社

ふたりしかいない僻地で何が起こったのか…

 特に平出さんは45歳。先鋭登山家として最も脂がのる年代は30代といわれ、残された時間は多くない。K2西壁をキャリアの集大成にしたいと考えていたはずだ。

 そのふたりに何があったのか。落石に襲われたのか、それとも何かミスがあったのか。今年のK2は天候が悪く、天気待ちの日が続いて日程的に追い込まれていたようなので、精神的なあせりがあったのか。ふたりしかいない僻地で何が起こったのかは、当人たちにしかわからない。

 現時点で言えるのは、日本と世界の登山界にとって大きな損失になってしまったということだけである。