「中村君、出よう。絶対おかしなことになるから」
五味 ちょうどシューマッハを組んで1年後ぐらいに(吉本を)出ました。吉本、今はすごくいい環境だと思うんですけど、当時はちょっとまだ昔の感じが残っていて。
若手はみんな無限大ホールに出てたんですけど、僕ら11期生から上は無限大ホールから出されるみたいな話を聞いたんです。実際その2年ぐらい前に上の世代の方々が出されてて、そこからいろいろと大変になると。
中村 チャンスが回ってこなくなる。
五味 そういう話を聞いてたんです。もちろん活躍してる人たちは他にも出る場所があるかもしれないですけど、大半はみんな出されちゃうと。でも当時事務所をやめるというのはなかなかのことだったので、特に吉本を出るというのは。
ある時、無限大ホールで11期生のライブがあるって聞いたんですね。同期同士が特別仲がいいわけでもないのに。「あっ、これはたぶん出される前の、最後にやっとくかみたいなライブだ」って直感が走りました。だから「中村君、吉本出よう」って。でも最初は「いやぁ……」っていう反応でした。
中村 吉本出たら干されると思いました。
五味 周りの人にも「絶対出ないほうがいいよ」って止められたんですけど、説得しました。「中村君、出よう。絶対おかしなことになるから」って。そこから他事務所のライブを見に行って、「サンミュージックだ!」となり、現在に至ります。
——それも直感だったんですね。
『いいとも』に毎週出てても営業の仕事は回ってこなかった
中村 僕は僕でちょっと違う考え方があって。『いいとも』に1人で出てる時に、いろんな事務所の芸人と楽屋で会うようになるんですね。そこで毎週のように「最近営業すごいでしょう」とか言われるんですよ。
「え? 全然。だって、吉本のピラミッドで俺ら下のほうだから(営業)来ないよ」「エッ、なんで? これだけテレビ出てるのに?」みたいなやり取りから、吉本はテレビとか関係なく、ライブで上に行かないと仕事が回ってこないという構造に気づかされました。
五味 当時はね……。
中村 『いいとも』に毎週出てても営業の仕事は1本も回ってこなかったから、「そうか、俺はここにいたらいつまでたっても飯食えねえのかな」って。
——以前文春オンラインでヤーレンズさんにインタビューしたのですが……。
中村 吉本脱出仲間の(笑)。
——やっぱり同じことをおっしゃってました。劇場のヒエラルキー問題。そして東京に出てきたら、自分たちの知らない面白い人がいっぱいいることに気づいたと。
中村 僕らもまさにそうでしたね。
五味 当時は本当に……鎖国と言うと語弊がありますけど、そんな感じでした。僕らも吉本しか知らなかったので、本当に井の中の蛙状態。でも僕らだって吉本にいた時は「俺ら吉本だし」みたいな、吉本に酔ってる状態でした。