平成最後の日、タモリはやはりテレビに出ていた。2019年4月30日に放送された『平成の“大晦日” 令和につなぐテレビ』(フジテレビ系)。そこで総合司会を務めていたタモリは、番組の最後、アナウンサーから「令和はどんな時代になってほしいと思われますか?」と番組全体を締めくくるコメントを求められ、次のように語った。
「さっき、平成とか(元号の)漢字がいっぱい出てきましたけども、何年か前に省庁が合併したりなんかしまして、看板があるんですね。あの漢字の中で、いかがなものかというのがかなりあるんで、この際どうですかね。ちゃんとあれをこう、漢字をやればいいんじゃないかと思いますけども」
要は、省庁の看板をきれいに書き直したほうがいい、である。さまざまな著名人や一般の人たちがこの日、平成はどんな時代だったか、令和はどんな時代であってほしいかといったことを、テレビカメラの前で語っていた。そんななか、このタモリの言葉は異色だった。というか、そもそも問いに答えていない。まるで、人為的に引かれた時代の境界線など、人類どころか生物もまだいなかった地球の46億年の歴史から見れば、あまり重要ではないとでもいうように。
タモリの頭にこのときあったのかもしれない、地球スケールの時間感覚。いや、実際にはそんな大層なことではなくて、単にタモリの気まぐれだったのかもしれないけれど、元号をめぐる言葉からそんなことを想像してしまうのも、やはりあの番組があったからだろう。『ブラタモリ』(NHK総合)である。
普段どおりのまま“最終回”を迎えた『ブラタモリ』
今さら説明するまでもないかもしれないが、『ブラタモリ』はタモリが日本各地を歩きながらその場所について学ぶ、教養エンターテインメント番組だ。パイロット版が放送されたのは2008年で、翌年にレギュラー化。2012年から3年の休止期間を経て、2015年に再びレギュラー放送がはじまった。最初のころのロケ地は東京が中心だったが、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)が終わってからは、地方ロケも行われてきた。
そんな『ブラタモリ』が、2024年3月9日でレギュラー放送を終えた。
番組公式サイトに掲載された説明は「今のスタイルでの放送は3月9日の回をもって、いったん区切りをつけることになりました」と含みがもたされているから、いつか特番で“復活”したりするのかもしれないけれど、いずれにせよ、さまざまな街を散歩感覚でブラブラしてきた番組は、そのコンセプトをまっとうするかのように、特に“最終回”に言及することもなく普段どおりのまま終了した。