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居候のプロだった“正体不明”の男

 あらためて思う。タモリほど、その正体が問われ続けながら、同時に芸能界の中心に存在し続けた人もいないのかもしれない。

 アングラな密室芸で芸能界に突然デビューしてから、『笑っていいとも!』で平日のお昼の顔となり、『ブラタモリ』で地形や岩石について楽しそうに語ってきたりする現在にいたるまで、タモリに一貫する像があるとすれば、それは“正体不明”であることだった。

©文藝春秋

 さらに、こうも言えないか。『ブラタモリ』で埼玉県・長瀞を訪れた際、タモリはその美しい渓谷の風景について次のように語った。

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「日本が誇るべき景色ですよ。でも残念ながら、つくったのは日本人じゃないんですけどね。地球がつくったの」(2017年8月19日) 

 タモリは、地球に居候している。いや、タモリだけではない。私たちは誰もが、46億年の時間軸で見れば地球に一時的に居候しているにすぎない。

 扇状地を、破砕帯を、河岸段丘をおもしろがるタモリを映してきた『ブラタモリ』から、私たちはそんな視野を受け取ることができるのかもしれない。受け取るべきなのかもしれない。あまり教訓めいたものを読み取りすぎるのは、タモリ的ではないのかもしれないが。