米人気オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』のゴールデンブザー獲得により、飛び級で次のステージに進出することが決定しているシューマッハ。元々M-1を目指していた二人が「犬で生きていく」ことを決意したその陰には、一発芸の道を貫いてきた先輩芸人たちの金言があった。
「できることならしがみつきたかった」漫才やコントへの思い、そして彼らからプライドや執着を捨てさせた「犬」という鎹。全ての「うまくいかなかった」人たちに送る、新しい人生の見つけかた。(全3回の3回目/はじめから読む)
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「僕にはもう犬しかなかった」
——M-1のような賞レースで結果を出すことが成功とされる今の芸人界で、動物のかぶり物ネタをする苦悩、そして喜びはどんなところにあるのでしょうか。
中村竜太郎さん(以下、中村) サンミュージックの話から急にテーマが壮大に(笑)。
五味侑也さん(以下、五味) それは深いですね。
中村 もともと2人ともM-1志向で、本当に最初は頑張ってたんですけど、僕がマジで噛むんですよ。本当に噛むんです、僕。
——そうなんですか。
中村 今はフリートークだからまだマシかもしれないです。でも漫才だと緊張しちゃって言葉がガガガッとなっちゃうので、漫才をまずあきらめました。だったらコントに……って思ったんですけど、僕はマジで中学生のお遊戯会以下の演技力しか持ってなかった。本当に演技が『中学生日記』以下で。
五味 もはや『さわやか3組』だね。
中村 漫才では噛むし演技もダメってなったときに、僕にはもう犬しかなかった。あれ、演技要らないんで。
——かっこいい。
中村 かっこいいですか?
——「僕にはもう犬しかなかった」ってかっこいい。信念を感じます。
中村 あれはお面の下で目をつぶって止まるだけなんで。あとは怪我しなきゃいいだけ。
五味 ほんとにね。
犬で営業に行くと、すごいいい反応がもらえる
中村 だから……五味君はコントも漫才も思いつく人なので、他の芸人と組んでればある程度いけてたと思うんですけど、俺を相方に持ってしまったから。
五味 そんな簡単じゃないよ。いや、いいんですよ。
中村 だから申し訳ないなと思ってるんですけど、何とか犬のネタで俺とコンビで居続けるように引き留めてる感じです。
五味 実際漫才やコントで勝負するのって大変ですよ。
中村 競技人口が多いからね。
五味 競技人口が多いですし、運もありますし。いいネタができてたとしても、それがタイミングによっては表に出ることもなかったり。負け犬の遠吠えですけど。でも、犬で営業に行くと、しょっぱなのお客さんにすごい反応がよかったりするんですよ。
——洋の東西を問わず老若男女にウケる。