衰えていくオールマイトは『NARUTO』や『BLEACH』の終了が…

 同時に大胆な設定だと感じたのが、No.1ヒーローのオールマイトの力が失われつつあり、ヒーローとして終わりの日が近いことを冒頭で示したことだ。

 それはそのまま当時の少年ジャンプが抱えていたベテラン作家の人気連載の終わりが近づいているが後進が育っていないという、危機意識を反映していたように思う。

オールマイトが力を失っていくのは、ベテラン作家の連載が終了することとリンクしている 「僕のヒーローアカデミア」アニメ公式サイトより

『ヒロアカ』の連載がスタートした2014年はジャンプを支えた人気連載の終了が始まりだした年だった。同年には岸本斉史の『NARUTO -ナルト-』が終了し、2016年には久保帯人の『BLEACH』と秋本治の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、2018年には空知英秋の『銀魂』の本誌連載が終了している。

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 だが一方で、2016年には吾峠呼世晴の『鬼滅の刃』と白井カイウ(原作)と出水ぽすか(作画)による『約束のネバーランド』、2018年には芥見下々の『呪術廻戦』と藤本タツキの『チェンソーマン』といった若手作家の手がける話題作の連載が始まり、世代交代が起こっていく。その嚆矢となって、新旧のジャンプの伝統を繋いだのが『ヒロアカ』だったと言える。

 その意味で物語の背後に当時の作者とジャンプの状況が透けて見えるのも、本作の隠れた魅力なのだ。