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大学を中退したのは「パリ五輪出場を目指すため」

 あるいは、タイトルをたくさん取った選手ではなく、トリッキーなパスを出せる選手の映像を見て刺激を受けることもあった。バスケ少年を夢中にさせる教材は、バラエティに富んでおり、それが様々なプレーを可能にしてくれた。先述のとおり、今大会の河村は抜きん出た得点力を発揮している。その一方で、Bリーグで直近の2シーズン続けてアシスト王に輝くほど、周囲を活かすのが上手い。何か一つの能力だけが突出しているタイプではないのは、幼少期に受けた映像の“エリート教育”と無関係ではない。

 小学生の頃から映像を見て、自分がなりたい姿を明確にイメージする訓練を受けてきた。だから、夢や目標を明確にイメージして、必要な努力をするのが当たり前になった。実際、卒業文集には、現在の代表チームでともにプレーする富樫のようになりたいと記している。

©JMPA

 そして、2022年3月に大学を中退してプロ入りを決めたときに描いたキャリアプランも、今になってみれば実に示唆に富んでいる。

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「パリ五輪出場が僕の目標です。目標に近づくためにどうするか考えて、この決断に至りました」

172cmの選手がNBAの舞台を目指す

 あの時点ではまだ日本代表に選ばれてはいなかった、そこから数カ月足らずで日本代表に選ばれ、そこから約1年半後の2023年8月にはバスケW杯の舞台で日本の中心選手となった。

 このようにわずか172cmの河村が世界を驚かせるに至ったのには、確かな理由があるのだ。

 恐ろしいのは河村がまだ、23歳であること。現在の日本代表のなかでも2番目に若い。パリオリンピック後にはNBAのメンフィス・グリズリーズで、練習生のような立場から、世界最高の舞台で活躍するための挑戦を始めることになっている。今回のパリオリンピックで見せている活躍は、河村の今後のキャリアを考えればまだ序章に過ぎないのだ。