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 アメリカ出身のホーバスHCはかつてトヨタ自動車(現アルバルク東京)で実業団選手としてプレーした経験があり、日本のJXサンフラワーズ(現ENEOSサンフラワーズ)という女子の実業団チームでもコーチを務めてきた。そうしたバックボーンがあるからこそ、日本の選手たちが抱える長所も短所も理解していた。そこで、東京オリンピックでは「3Pシュートの多用」、「スピード」、「スタミナ」を武器に、女子代表チームを世界2位に導いたのだ。

©文藝春秋

 冒頭に述べたとおり、バスケットボールでは身長がものを言うスポーツである。もし、身長の高い選手が男女問わずひしめいているアメリカのバスケットボールしか知らなければ、彼が身長の低い選手に可能性を見出すことなどできなかったはずだ。

ホーバスHCはなぜ身長の低い選手でも登用するのか?

 ホーバスHCは女子での功績が評価され、東京オリンピック後に男子の日本代表のHCに就任した。そこではまず、167cmの冨樫をキャプテンにすえた。170cm前後の身長は、バスケットボール選手としては身長が“低すぎる”部類に入る。富樫も河村も司令塔であるポイントガード(PG)というポジションを務めるのだが、当初は、富樫以外のPGには背の高い選手を起用しようと考えていたという。

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 しかし、河村と出会って、その考えを変えた。自著「スーパーチームをつくる!」のなかで、ホーバスHCはその理由をこう記している。

「実は、私も初期の段階では小さなガードを2人も入れるとは考えていませんでした。しかし、2人ともに素晴らしい選手です。何より彼らは、私たちのチームを速く走らせてくれるのです(中略)そこで私は考え方を変えました(中略)富樫選手も河村選手も、得点を奪えて、アシストもでき、チームの攻めのペースを上げて、攻撃回数を増やすことができます。どんな選手にもプラスとマイナスがあります。私は彼らのプラスの面に目を向けて、チークづくりをすることにしたのです」

 実は、こうした考え方は、バスケットボール界では実に異例だ。中学卒業後にアメリカに渡り、イタリアでもプレーした経験のある167cmの富樫は以前、こう話していた。