神奈川県横須賀市に位置するうみかぜ公園(横岸壁)は関東でも人気を誇るファミリー向けの釣り場で、一年を通してサビキや投げ、回遊魚狙いのルアー釣り客で賑わいを見せる。
そんな釣り初心者の方でも安心して楽しめる釣り場で、数年前に近隣釣具店から驚愕の釣果写真が公開された。その写真は人の背丈の半分はあろう巨大な魚で、顔は厳つく頭は大きなコブが張り出したまさにモンスターと言える形相。異色な魚の正体はコブダイだ。
関西や九州地方では、堤防や釣り公園からシンプルな仕掛けでビッグファイトが楽しめる「タンコブゲーム」としてコブダイ釣りが人気を博していたが、関東ではコブダイ自体の生息数が比較的少ない。だからこそ、平穏な釣り場に突如現れたモンスターの釣果写真に度肝を抜かれた。しかも釣れたのはなんと足元から……。海は底知れぬロマンに満ち溢れている。
その日から「関東の釣り公園でコブダイを釣り上げたい」という目標を掲げ、釣り場に通い続けた。しかし待ち受けていたのは苦難の連続であった……。ここからは数年にわたって、関東のファミリー向け釣り場に実在する巨大魚を追い求めたもようをレポートする。
地獄の始まり
初めての挑戦は、遡ること3年。2021年2月のことだった。
釣り場へ向かう前に、まずはコブダイを狙うための“釣り方”と“釣れる時期”をリサーチする。
歴史ある関西のタンコブゲームは、大物にも対応したショアジギングタックルを用い、仕掛けはオモリとハリ。そこへスーパーで売っているバナメイエビをエサにしたブッコミスタイルで狙うのがスタンダードとのことだった。
釣り方自体はシンプルそのものだ。まずはこの方法を採用しよう。時期については、コブダイが別名カンダイ(寒鯛)と呼ばれている=冬に釣れる魚だろうと考えたこと、さらに釣果情報が上がっていたのが3月だったことから、ひとまず2月に初めての釣行へ向かった。
現場に到着すると寒風吹きすさぶ極寒。バナメイエビを投入するも魚からの反応は皆無だ。それもそのはず、海水温は全国的に2~3月が最も低く、近隣の釣り場である海辺釣り公園で観測された水温は11℃。アジ、サバ、カワハギなどの大衆魚にとっても活動限界水温で、食い意地の張るフグですらエサを食べる元気がないような環境である。コブダイ自体は、それくらいの水温でも活動はできるそうだが、釣り人の精神をも蝕む寒さに耐えきれず、撤退を余儀なくされた。これは明らかにリサーチ不足がもたらした圧倒的敗北である。