国家は税によってつくられ、税がつくられると必ず発生する脱税。「大化の改新」「源平合戦」「織田信長の延暦寺焼き討ち」そして現代に至るまで、歴史の大きなターニングポイントの裏には必ずといっていいほど脱税が絡んでいた。思わぬ事実に目からウロコ。脱税の視点で日本史を読み解く『脱税の日本史』(宝島社)より一部抜粋して紹介します(全3回の3回目/最初から読む)
トヨタは日本でほとんど税金を払ってない
日本最大の企業というと言わずと知れたトヨタ自動車です。
令和6(2024)年3月期の連結決算でも、日本企業で過去最高となる5兆円を超える利益を計上しました。
にわかには信じられない話かもしれませんが、別に極秘ニュースでも何でもなく、トヨタの会計データを見れば誰でも確認できる事実なのです。
まず、トヨタは平成20(2008)年から5年間も法人税を払っていません。この5年間、トヨタは決して景気が悪かったというわけではありません。この間に、トヨタは最高収益を更新しているほど儲かっていたのです。
トヨタというのは、よくも悪くも現在の日本企業を象徴するものです。
トヨタが5年間、法人税を払っていなかったのも、昨今の日本経済や税制を象徴する現象だったのです。
平成26(2014)年3月期の決算発表の際に、豊田章男社長が衝撃的な発言をしました。
「一番うれしいのは納税できること。社長になってから国内では税金を払っていなかった。企業は税金を払って社会貢献するのが存続の一番の使命。納税できる会社として、スタートラインに立てたことが素直にうれしい」
この言葉の意味がよくわからなかった人も多いはずです。
日本最大の企業が、日本で税金を払っていなかったというのです。
ここでいう税金というのは、法人税と事業税、法人住民税の一部のことです。
これら三つの税金は、事業の収益に対して課せられるものです。つまりは、黒字の企業に対して、その黒字分にかかってくる税金です。
平成21(2009)年から平成25(2013)年までというのは、リーマンショックと大震災の影響などがあり、確かに業績のよくない企業は多かったのです。
しかし、トヨタはそうではありませんでした。この5年間で、トヨタはずっと赤字だったわけではありません。近年赤字だったのは、リーマンショックの影響を受けた2010年期、2011年期の2年だけです。それ以外の年はずっと黒字だったのです。