「手縛っていい?」「おっぱい触らせて」――女性記者へのセクハラ疑惑が報じられていた財務省の福田淳一事務次官の辞任が24日の閣議で了承された。事態は収束するかと思われたが、与党内から思わぬ発言が続いて延焼中だ。一連の言葉を振り返ってみる。
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麻生太郎 副総理兼財務相
「はめられて訴えられているんじゃないかとか、ご意見はいっぱいある」
朝日新聞デジタル 4月24日
福田氏の辞任を了承した4月24日の閣議後の記者会見で、「事務方のトップである事務次官が自身のセクハラ疑惑によって辞職するような事態に至ったことははなはだ遺憾だ」と語った麻生財務相。ただし、福田氏への処分は先送りとされた。その理由として語ったのがこの言葉である。
つまり、福田次官はセクハラの被害に遭ったとされる女性記者と彼女が所属するテレビ朝日にはめられた、ということだ。ネットなどでセクハラ被害にあった女性記者を攻撃する際に持ち出される「ハニートラップ説」である。作家の百田尚樹氏も「セクハラ発言をした次官はバカだが、一種のハニトラのようにも思える」とツイッターに書き込んでいる(4月18日)。
その後、行われた野党合同ヒアリングでは、財務省の柳瀬護参事官が「大臣は自分のネットワークの中で見聞きされた意見を述べただけ」と語っていたが、麻生氏の「ネットワーク」がどんなものかうかがい知れる。
立憲民主党の尾辻かな子氏は「セクハラ被害者への人権侵害だ」と非難。希望の党の山井和則氏は「被害女性を加害者扱いしている。根拠がないなら第二のセクハラだ」として、財務省に麻生氏の発言の撤回と謝罪を求めた(東京新聞 4月24日)。
なお、麻生氏は先週から「相手(被害を受けた女性記者)の声が出てこなければ、どうしようもない」「こちら側も言われている人の立場も考えないと。福田の人権はなしってわけですか」と一貫して福田氏を擁護する発言を続けていた。福田の人権はあっても被害者女性の人権はなしってわけですか。
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下村博文 元文科相
「隠しテープでとっておいてね、そしてテレビ局の人がですね、週刊誌に売るっていうこと自体が、ハメられてますよね。ある意味で犯罪だと思うけど」
TBS NEWS 4月24日
下村博文元文科相が22日に東京都内で行った講演で、セクハラ発言をしたとされる福田淳一財務次官は「ハメられた」とし、被害女性について「ある意味で犯罪」などと述べた。共産党が録音した音源を23日に公表した。麻生氏は「という意見もある」と濁していたが、下村氏は明確に被害者を加害者扱いしている。
セクハラ問題について、女性記者が所属するテレビ朝日は19日の会見で、約1年半前から取材目的で福田氏と1対1で会食するたびにセクハラ発言があり、自身の身を守るために録音を始めたと説明していた。
下村氏は23日、「『ある意味犯罪』と述べたのは表現が不適切でした。率直に撤回するとともに謝罪いたします」とコメントを発表し、謝罪した。「表現が不適切」というのは、大筋は変わらないが表現を間違えたということなのだろうか? 元財務官僚の山口真由氏は「ここまで被害者を中傷するのは、どう考えてもアウト」と下村氏を批判した(『羽鳥慎一モーニングショー』4月25日)。