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平成皇室は「皇太子への憂鬱」から始まった

「私家版 平成皇室10大ニュース」座談会 #2

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新天皇皇后は、どのような道を歩まれるのか

――お代替わりまであと1年。あまり実感がわきませんが、新しい天皇皇后両陛下はどのような道を歩まれるのでしょうか。

S記者 私は、今後雅子さまのお出ましが増えることを前提として、東宮女官が増員されていると思います。やはり女性皇族の「発信力」は絶大で、現状では雅子さまが病気療養中ですから、皇太子さまがどういう方なのか、国民が深く知る機会は限られていたように思うんですよ。

2017年12月、雅子さまのお誕生日に際して公開された皇太子ご夫妻のお写真 宮内庁提供

 今上陛下が象徴天皇として国民から受け入れられているのは、美智子さまが常に左隣にいらっしゃって行動を共にされていることも大きいのでは。美智子さまの柔らかい雰囲気が陛下の威厳とミックスされて、両陛下ならではのいい雰囲気を生み出してこられたように思います。美智子さまは国民とのクッション役を果たされていて、平成皇室が国民からの絶大な支持を得た基盤となっていると言っても過言ではないと思うんです。それを考えると、これまで皇太子さまはお一人で苦労されたと思います。

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辛酸 お代替わりされたら、雅子さまがすごくお元気になられるのでは、という説もありますね。

S記者 お元気にならざるを得ないんじゃないかと思うんですよ。「即位礼正殿の儀」で、皇后は十二単をお召しになって御帳台へお立ちになります。そして「大嘗祭」でも装束をお召しになりますし、伊勢神宮へのご参拝にもいらっしゃる。雅子さまは宮中祭祀がお苦手だと言われていますが、数々の儀式が続きますから「皇后さまのご体調が整いません」というわけにはいかないのではないでしょうか。

2018年、新年一般参賀での雅子さま ©文藝春秋

河西 私は、国民からの支持を得ている「平成の在り方」を否定はできないと思うんです。今年3月、静養のために長野県を訪れたとき、雅子皇太子妃が長野駅でまっさきに車椅子の人へ声をかけた一幕があったそうですね。「国民の中に分け入る」というのが平成の在り方だとすれば、こういった行動はまさに「平成の在り方」そのものなんですよね。

2018年3月26日、長野駅でお手振りをされる皇太子ご一家 ©JMPA

S記者 そうですね。皇太子ご一家の公務の3本柱は環境問題、障害者・高齢者の福祉、戦争慰霊だと私は考えています。

 特に環境問題は皇太子ご一家のご活動のカラーが出てくるものになるのではないでしょうか。環境問題は、国内のみならず世界的なテーマです。皇太子さまは水問題のご研究に取り組まれていて、国連などで何度も講演されています。しかし、いきなりとってつけたように環境問題にご関心をお持ちになったわけではなく、大きな自然災害が起きると被災地に足を運ばれて被災者を見舞ってこられた両陛下のなさりようがベースになっているのではないかと思っています。

河西 美智子皇后は、ちょっと超人的な方なので……。すべてを真似することはできないと思いますが、新しい天皇の代の皇后の行動はソフトランディングするのではないでしょうか。雅子皇太子妃は、国際親善など、対外的に出ていくことをどんどんやっていかれたらいいと思いますね。

辛酸 やはり雅子さまは、ご自分の時代が来た、という内側から湧き上がってくる力をお感じになっているのでしょうね。

S記者 最初のうちは、「平成の天皇皇后両陛下とは違う」と比較されて、批判されると思うんですよ。でも、私は現場で雅子さまがフランクに国民とお話しになるご様子をたくさん見てきました。一昨年の岩手県行啓では、雅子さまが「どちらからいらしたんですか?」とお尋ねになると、「あんたはいつから?」みたいな感じで答えているおばあちゃんがいてびっくりしたんです(笑)。「昨日からです」とお答えになると、「病気は治ったの?」とか聞いちゃうんですよ。

2013年11月、東日本大震災で被災した人々に声をかけられる雅子さま(岩手県釜石市) ©JMPA

――雅子さまはどんなご反応なんですか?

S記者 「ご心配おかけしまして」という風におっしゃっていましたよ。お二人は、国民にとってより身近な天皇皇后両陛下になられると思います。皇太子さまが、気さくにセルフィーに写られるほどですもんね(笑)。

河西 「天皇皇后写真ツイート炎上」(2014年)はまだ4年前のことです。女子高生が、天皇皇后の写真をツイッターにアップして、不謹慎だと批判を浴びました。天皇皇后が私的旅行で栃木県小山市を訪れたときに撮影されたもののようです。あの頃に比べても、「皇室」に対する国民の受け止めはずいぶん変わったなと思います。桜を見に、皇居の外を歩く天皇皇后を、皇居ランナーがスマホで撮影することは今や普通ですよね。

辛酸 そして気になる新元号。どんな漢字が選ばれるのでしょう。新元号の候補をメディアで取り上げると、それはもう使えなくなると聞いたことがあります。竹田恒泰さんがネット番組でそれっぽい新元号を予測していましたが、さすが深い知識をお持ちなだけあってあり得そうなものばかり。政府は使える数が減ってしまって困っているのでは、と心配です。

河西 平成がどんな形で幕引きをして、次はどんな時代を迎えるのか。これからも変わらずに注視していきたいですね。

 

写真=釜谷洋史/文藝春秋

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