なんといっても新しいのは、タカとユージのプライベートが描かれていること! 探偵事務所兼自宅を拠点とする今作では、スーツを脱いだ私服姿の2人や、鼻歌を歌いながら屋上で洗濯物を干すユージなど、そのルームシェア生活を垣間見ることができる。「タカとユージが一緒に暮らしているから」ではなく、パートナーの女性やお手伝いさんといった他者を介さない男性の2人暮らしそのものが、新鮮な光景だった。

 さらに『帰ってきた あぶない刑事』の特筆すべき点は、今作が“疑似家族”をテーマにしていることだ。その鍵を握るのは、土屋太鳳演じるヒロイン・彩夏。

 数年前ならば、どちらかの恋人としてキャスティングされていたかもしれない……とも思うのだが、彼女は自分の母親・夏子を探してほしいと「T&Y探偵事務所」を訪れる。実はその夏子こそ、タカとユージがかつて愛した女性で、それならば彩夏は……と、急にどちらかの娘疑惑が浮上。そして娘と2人の父による“疑似家族生活”が始まるのだ。

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『帰ってきた あぶない刑事』公式Xより

「2人ってもしかして……愛し合ってる?」

 一番印象に残っているのは、3人で食卓を囲んだ際に彩夏が2人の関係についてぶっ込むシーンだ。

「2人ってずっと独身? もしかして……愛し合ってる?」
「俺はタカのためならいつだって命をかけられる。それを愛というなら愛なのかも」

柴田恭兵 ©文藝春秋

 あまりにも鮮やかなユージの回答に「愛とか超えてない?」と返す彩夏まで含めたすべてが良いシーンなのだが、まさか令和の『あぶ刑事』がこのような展開になるとは誰も思っていなかっただろう。