映画『帰ってきた あぶない刑事』が大ヒットしている。観客動員数は119万人を超え、興行収入は16.27億円を突破。2016年公開の前作『さらば あぶない刑事』の最終興行収入(16.25億円)を上回った(2024年8月時点)。
テレビシリーズ放送開始から38年。変わらず主演を飾るのは74歳の舘ひろしと、本日8月18日に73歳の誕生日を迎えた柴田恭兵だ。本作をふらっと鑑賞した筆者は、衝撃を受けた。なんと、タカとユージが2人暮らしをしていたのである!
たとえば同年代の女友達と話していると、定期的に「もし結婚しなかったら友達と暮らすのもアリじゃないか」という話題になる。昔の阿佐ヶ谷姉妹みたいにマンションの隣同士に住むのがいいんじゃないか。いっそのこと、既婚の友達も集めて、みんな近くのエリアに住めば最高じゃないか、とその妄想は尽きない。
しかし、なぜか独身の男友達と話すときには、一向に、その手の話題にならないのである(筆者の交友関係が極端なだけではといわれたらそうかもしれないが)。男性からそんな声が上がらない理由の一つは、そういう男性たちを描いた物語が少ないからではないだろうか。
“男性同士の暮らし”はなかなか描かれてこなかった
女性同士の連帯を意味する「シスターフッド」という言葉が、日本のエンタメ界に浸透して久しい。昨年大ヒットした『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)や現在最も熱いまなざしが注がれているだろう朝の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合)も、その根底には、理不尽な時代に手を取り合った女性たちの連帯がある。
一方、男性主人公のドラマの主流は、依然として『半沢直樹』(TBS系)のようなビジネスドラマ、もしくは『孤独のグルメ』(テレビ東京系)のような特定の趣味を極めたプロフェッショナルたちの物語である。現代で男性同士の暮らしを描くとしたら、たいていはBL(ボーイズ・ラブ)になるだろう。都会の生活に疲れた反町隆史と竹野内豊が海辺の民宿で暮らす『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)みたいな作品は、意外にも少ない。
ビジネスや性愛が絡まない男性同士の連帯や、「結婚」という生き方を選び取らなかった男性たちは、令和の物語においても、あまり可視化されていない現状にあると思う。
『帰ってきた あぶない刑事』を観たのはそんなふうに考えていた矢先のことで、まさに“そういう男性たち”の物語になっていたことに、驚いたのだ。