8月13日に全国382館で復活上映した映画『THE FIRST SLAM DUNK』。その人気は日本のみならず海外でも留まるところを知らない。幅広い世代の心をつかんだ施策を制作スタッフに尋ねた。(全3回の2回目/#1#3を読む)

 

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『THE FIRST SLAM DUNK』海外での反響と宣伝

――本作はこれまでに122の国と地域で上映(※2024年8月現在)されましたが、海外における宣伝は、どのようなベクトルで行ったのでしょうか?

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小池 本作は、それぞれの国や地域ごとに異なる宣伝プランと素材を用意しました。例えばイギリスでは、すでに原作の知名度が高いアジアの国や地域に比べて、『SLAM DUNK』という作品自体の認知が低かった。ですので、そういう国や地域の人たちにこの作品を届けるには、原作の読者なら大きく反応する「山王戦」(※湘北高校 VS 山王工業戦)という要素は小さく見せて、むしろ「バスケットを通した男の子の成長物語」といった要素を押し出し、それに合わせた予告や宣材素材を用意しました。

――特に反響が大きかった国や地域は?

小池 強いて挙げるなら中国と韓国でしょうか。人口は異なりますが、特に中国は短期間に多くの上映作品がひしめき合うという興行環境のなか、現時点でおよそ興収130億を上げていて、金額としても突出しています。一方、韓国は、個々のファンの熱量がすごく熱い。昨年の1月から公開を始めて、いまも上映中です。まだ延々と続くんじゃないか?と思うような熱量です。あとは台湾も非常に盛り上がりましたね。中国と台湾では復活上映も決まりました。いずれの国と地域も、原作の人気が下地にあったと感じています。

©︎石川啓次/文藝春秋

――話題を日本に戻しますが、2022年12月のロードショー以降、制作サイドが「これはヒットするのでは?」という手応えを感じたのは、公開後、どの辺りのタイミングだったのでしょうか?

小池 実はこの作品って、おそらくいま世間の皆さんが思っているよりも、初週の成績はそこまでじゃなかったんですよ。データを見れば一目瞭然ですが、結果的に158億の興収を上げた映画としては、ものすごくスロースターターだった。ところが、2023年の3月の春休みに入った辺りでも、まだ興収が落ちなかった。いま思うと、そこで「満足してはいけない」と何度も言い聞かせたスタッフのみんなの信念みたいなものがまず重要だったような気がします。