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変化を続けた観客層

――観客層についてはどうでしょうか?

小池 2022年12月の公開当初から翌年の2月頃までは、30代から40代の男性が大半を占めていました。ご存知の通り、原作の『スラムダンク』はすでに完結していて、今も連載が続いている作品のように、新しいファンに日々広がっていくというよりも、昔から応援してくださる読者やアニメのファンが先行するのは、ある程度想定の通りでした。

 それが3月になると学生を中心とした若者が増え、それ以降は明らかに20代の女性が当初の男性層を逆転し始めて、7月から8月はほぼ女性に入れ替わりました。今の時代、男女別や年齢のカテゴライズで客層を語るのはもう古い考え方なのかもしれませんが、明確に変わったことは確かでした。数カ月毎に、違うお客様と向き合っていたような感覚でしたね。

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――客層が変わった要因は何だったのでしょうか?

小池 様々な理由があると思うので、「これ」と絞って断言するのは難しいのですが、最初の3、40代男性は、リアルタイムで原作ファンだったかたがた、女性のみなさんはSNSなどの口コミで興味を持ってくださったかたがた、10代は春休み、夏休みというタイミングで足を運んでくれた学生さんだったと捉えています。

 

 2023年3月からは、別の楽しみ方としての「応援上映」、お子さんがまだ小さくて映画館に行きづらい親に向けた「声出しOK!キッズ上映」、学生さん向けのワンコイン(500円)による「応援学割」、外国人観客のための「英語字幕版」の上映などさまざまな施策を行ってきましたが、とにかく「映画館で観てもらいたい」の一心でしかなかった。その結果、客層が変わっていった。本当にそれだけだと思います。

SNSの声を拾い上げリクエストに対応

――そうした施策は、どのように発案されたのですか?

小池 劇場における客層の集計や、東映の宣伝プロデューサーの丸山(智史)さんと一緒にはじめたYouTubeのライブ配信(※『TAB Channel/タブ【Toei Animation Beyond】』)に寄せられたコメント、SNSの声などを、なるべくつぶさに拾い上げ、それをヒントに考えていきました。もちろん、全てのリクエストに応えることはできませんが、こちらがそうした発案に至った経緯や思いなどをお客さんと共有することで、次の案、次のリクエストに繋がっていったという感覚があります。

 本作は2022年12月から、いわゆる「ロングラン上映」を続けてきましたが、2023年の夏に入ると、流石にもう深夜帯で1回しかかからなくなってきた。でも、まだ観ていない学生さんは、深夜じゃ観られませんよね。そこで劇場と交渉して、「朝練(※8時~11時)」、「昼練(※11時~15時)」、「夜練(※18時~22時)」といった形で、1日1回しかない上映チャンスを、週ごとに時間帯を固めて、「この週は朝」「この週は昼」と事前に発表するようにしたんです。

 上映スケジュールが事前に発表されていれば学生さんも事前に予定が組み易くなるし、効果的な施策になりました。そんなふうに、皆さんの「〇×だから観られない」という理由と愚直なまでに向き合い、その解決作をひたすら追求し続けました。