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それが、いまや500席以上の大ホールで怪談イベントを行い、しかもそのチケットが即日完売するほどの怪談師も1人や2人ではありません。

怪談の裾野が広がっていくなかで、大きく変わったなと感じるのは、ファンや視聴者の方々が怪談を話芸のひとつとして捉えるようになったこと。

これまで怪談は話芸としては認められていなかったんですよ。

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そもそも“素人に毛が生えた怪談”が怪談会の魅力のひとつでもありました。

不思議な体験をしたり、知り合いに怖い話を聞いたりしたことがない人はいないはずです。話そうと思えば、誰もが怪談を話せるわけでしょう。

だから、噺家さんの落語や、講談師さんの講談のように確立された話芸ではなく、話芸未満のカジュアルトークで、素人に毛が生えた程度の物好きが怖い話をする――それが一般の方がイメージする怪談でした。

けれども、コロナ禍に怪談を語る人が一気に増えて、切磋琢磨するなかで、怪談が話芸として磨かれていった。コンテンツの数が増えるのと比例して、怪談師の話芸も、怪談のクオリティも上がっていった。こうした流れが、いまの怪談ブームを支えているのです。

「時短」の時代に相性がいい

――令和の怪談ブームにはどんな特徴があるのでしょう。

たとえば、1990年代にも怪談が流行しました。『学校の怪談』が映画やアニメになってヒットしたり、小説家の中山市朗さんたちの『新耳袋』など、不思議な体験をした人に話を聞いて書いた「実話怪談」が注目されたりしました。

しかし90年代には、怪談は、都市伝説や超常現象などとともにオカルトブームのジャンルのひとつに過ぎませんでした。70年代のオカルトブームでも同様で、ブームの中心はノストラダムスの大予言やスプーン曲げで、怪談ではなかった。

しかし令和のブームでは、オカルトではなく、怪談そのものに注目が集まっています。

とくに若い人にウケている。その理由は、コンテンツが短いこと。

講談や落語は、そもそも使う言葉や話の筋が難しい上に、長いと感じる若い世代が増えたようなのです。