「会社を辞めたい」夫の相談に妻・あかりさんは…
――あかりさんは、けんじさんの仕事の悩みは聞いていたのですか?
あかり 仕事を辞めたいという話は、付き合っている頃からずっと聞いていました。自分で言うのもなんですけど、私は割と器用に仕事をこなせるタイプなんですが、けんじはそれ以上になんでもできるタイプなんです。だから、もったいないというか、もっと能力を発揮できる仕事はあるんじゃないかな、と思ってましたね。
それに、私も転勤の希望が通らなかったり、実績を出していたのに会社の都合で昇格できなかったり、いわゆる“大企業のしがらみ”を経験していたので。けんじから会社を辞めたいと相談されたときも、「全然いいよ。辞めたら?」というスタンスでした。
――けんじさんの気持ちが理解できたと。
あかり そうです。私の会社も福利厚生が手厚くて、上司や先輩はたくさん給料をもらっていたけど、けんじと同じように、社内に憧れの人はいなかった。けんじと私は、考え方がほぼ同じというか、価値観が近いんですよね。
――とはいえ、安定した職と収入を手放すのは、もったいないと思わなかったのですか。
けんじ 僕たちは、大金を稼ぎたいという考え方ではないので。一緒に生きていければ、それでいいのかなと。
あかり この先の30年、40年を「しんどい」と思いながら働くほうが損しているというか、もったいない。それよりも、ふたりで好きなことをやったほうがいいかなと思いました。
軽自動車で車中泊を始めることになった理由
――ふたりでやりたいことが、車中泊だった?
あかり いや、私たちはふたりともカレーが大好きで、カレー屋になりたいと思っていたんです。けんじが会社を辞めたあとに、修行をしたり、何かしらカレーに携わる仕事をしてから、お店を開こうと思っていました。
でもコロナ禍になってしまったので、さすがに今は飲食店を開くタイミングではない、ということになって。
――新型コロナの感染拡大によって、予定が狂ってしまったわけですね。
けんじ そうです。僕が会社を辞めるのも、コロナ禍で1年先延ばしになってしまって。