1ページ目から読む
4/4ページ目

 うつむき加減、視線を上げるタイミング、首の傾げ方、目の色、声のトーンに間の取り方まで、酒井法子という人は自分の見せ場や見せ方、感情の訴え方をよく知っている。それは天性の勘のようなものだろうか。わずか3分半ほどのコメントだが、彼女の感情や気持ちが見ている側に伝わりドラマを見ているようだ。

 犯した罪については「すぐに信頼が回復できるものではない」といい、「心を入れ替え、日々努力し」、支えてくれる人々の温かい気持ちに感謝を表する。そして「決して二度とこのようなことで皆様の信頼を裏切ることはありません」と視線を左右に送り、自分の気持ちを印象づける。時おり用意した書類に目を走らせ、ゆっくりと読み上げるように言葉を続けた。

©文藝春秋

元夫・高相祐一氏や、長男についての言葉が出ることは一度もなかった

 最後は応援する日本や海外のファンや世話になった会社、スタッフらに対して、声を詰まらせ、涙ぐみながら「このたびは本当に、本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げた。ファンや関係者らが自分をどう思っているのか、不安でたまらなかったのだろう。

ADVERTISEMENT

 会見の間、自身を覚せい剤の道へ引き込んだ元夫・高相祐一氏や、長男についての言葉が酒井さんの口から出ることは一度もなかった。

 だが同席していた彼女の弁護士だろうか、彼女や家族が生活に支障をきたすような取材や報道は差し控えてほしいと申し入れるのを聞き、彼女は唇を一文字に結んだ。そこに強いストレスがあったことがわかる。

 この場で夫や長男についてわずかでも口にすれば、冷静さを装おうとしていた彼女の感情は崩れてしまったかもしれない。事件の当事者である自分から、取材や報道を遠慮してほしいということはできなかったのだろう。

判決の日、法廷入りする酒井さん ©文藝春秋

 東京地裁で行われた裁判では懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決が下された。執行猶予があけた2012年の11月24日にも、酒井さんは復帰会見を開いている。黒系だった服は、アイボリーのワンピースに変わり、胸元を真珠のネックレスが飾る。ロングの髪は柔らかくカールされ、きれいにメイクされた顔には本物の笑顔が浮かんでいた。

 酒井さんが芸能活動を再開して12年が経とうとしている。その陰には、保釈直後の記者会見に同席した相澤正久氏、三枝照夫氏への感謝と贖罪の気持ちがあったことだろう。

 彼女はあの日の誓いを胸に刻み、その後の人生を歩んでいる。