2024年のニューイヤー駅伝優勝、駒沢大OB・鈴木芽吹や中央大OB・吉居大和ら今年の箱根駅伝でのスター選手も擁する強豪「トヨタ自動車」陸上長距離部。慶應大学4年生、第99回大会で学生連合に選ばれ、10区を走った貝川裕亮さんは、2023年に同社に入社し、マネージャーを務めている。

 学生連合を経験し、現在はスター集団に身を置く彼は、『俺たちの箱根駅伝』に何を見、箱根駅伝をどう総括するのか――。

 

◆ ◆ ◆

ADVERTISEMENT

――貝川さんは『俺たちの箱根駅伝』著者の池井戸潤さんと同じ、岐阜県八百津町のご出身。発売当初から本書を手に取り、SNSでアツいメッセージを送ってくださいました。

貝川 同郷、しかも同じ慶應大学の出身ということもあり、池井戸さんのことは以前から地元のスターということで尊敬の対象でした。そんな池井戸さんが、箱根駅伝のことを書かれたと知り、調べるとなんと僕も経験した「学生連合」のことが書いてあるらしい! なんて嬉しいことだ、とすぐに手に取りました。

 大学生の頃ならいざ知らず、2023年から社会人になってなかなか読書をする時間を取れていなかったのですが、今作は上下巻をすぐに読み切りました。

――貝川さんは岐阜県・美濃加茂高校のご出身ですね。高校の頃から陸上競技に打ち込んでいらっしゃったそうですが、進路はどのように決めたのですか?

貝川 陸上を始めたのは小学生のときでした。以来ずっと陸上を続けてきて、「いつかは箱根駅伝に出たい」という気持ちはずっとありました。でもいざ進学を決めるとき、強豪校に入って、太刀打ちできるのかなっていう少し怖い気持ちもありました。そんなとき、慶應の「箱根駅伝プロジェクト」を知ったんです。競走部コーチにお会いして、「慶應は20年以上本選に出場できていない。でもいま、本気で箱根を目指している」という話を聞いて、ビビッと来たんです。

 

 実は高校のチームも、かつては強豪ではなかったところを「全国駅伝に出る」ことを目標に強くなっていったチームでした。高校の恩師の熱い気持ちに共鳴して3年間走り切ったので、そういう「これから上がっていくチーム」に対する共感もありました。

 ちょっとカッコつけた言い方になってしまいますが、常勝チームにいたら、「自分自身の力でここにいる」感覚が持てないのかな、ということも頭に過りました。チームの流れの中で出場するのではなく、自分自身の力で、チームを箱根に連れていくことに憧れて。

 ただ、慶應にはスポーツ推薦の制度がないので、自力で入学しないといけない。難関校を目指す特進クラスにいたこともあり、一般入試かAOか迷いましたが、AO入試で入学しました。