――学生連合は「オープン参加」という立ち位置で、正式なタイムは記録に残らず、順位もつきません。『俺たちの箱根駅伝』では、そうした境遇の中で「なぜ走るのか」「なぜ努力するのか」が問われますが、実際に走ってみた貝川さんの体感はどうでしたか?

貝川 僕も本選前、走ることへのモチベーションを失ってしまった時期もあるので、すごく共感できました。

 1回だけ顔合わせをして、2度目に会うのが本選当日、というくらいの距離感だったのですが、1区で飛び出して独走状態になったチームメイト(育英大・新田颯)がいたり、思っていた以上にチームとしての結束感を感じることが出来たのも印象的でした。学生連合は「寄せ集め」と言われますが、そうではなく、選手一人ひとりにチームがあって、その思いを背負っているんだなと。

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 しかも学生連合は、選手一人ひとりの思いを背負ったチームであると同時に、予選会で負けていったすべての敗者たちの代表でもあるんです。そのことを、『俺たちの箱根駅伝』を読んで改めて感じましたし、学生連合は最下位の常連のような見方をされていますが、ここにあったようなやり方をすれば、もっと上へ行けたんじゃないか――どうせオープン参加だからという気持ちではなく、一人の箱根駅伝を走る選手として戦い、勝ちにいく戦い方もできたんじゃないか、自分がもしそのチームにいたらついていけたか――とか、ありえたかもしれない学生連合のことを考えたりもしました。

――貝川さんが走った10区は慶應大学のキャンパスの近くを通るルート。チームメイトやOBの皆さんも喜ばれたんじゃないでしょうか?

貝川 はい。高校のときの恩師や両親、大学のチームメイトも応援に来てくださいました。箱根駅伝っていただく応援の量が桁違いで、すごく熱気があるんですけど、そんな中でも不思議と、知っている顔は走りながらぱっと目に入るし、声も聞こえるんです。

 僕自身、慶應から学生連合に選ばれた先輩のレースを見に行ってやる気をもらったように、後輩たちがまた本気で箱根駅伝を目指すモチベーションになれたらいいなと思いながら走りました。