近未来のディストピアを描いたロードムービーである『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、アメリカ大統領選挙の投票日を1カ月後に控えた今、必見の映画である。
アメリカ国内に渦巻く分断と憎悪を描いたこの映画は、現実とフィクションの皮膜の間に位置する。果たして、監督のアレックス・ガーランドが映画で描くようなアメリカの内戦は、現実の世界で起こり得るのか。
舞台は内戦が勃発したアメリカ
映画は、大統領(ニック・オファーマン)がホワイトハウスから「われわれは歴史的な勝利に近づいている」という演説を練習する場面から始まる。戦う相手は、反旗を翻すカリフォルニア州とテキサス州を中軸とした西部連合軍。大統領の強気の演説とは裏腹に、連合軍の包囲網は徐々に狭まり、大統領はホワイトハウスに立てこもっている状態だ。
ニューヨークでは、人々が飲料水の配給を待って長い列を作る。そこで自爆テロが起き、ベテランの戦争カメラマンのリー・スミス(キルステン・ダンスト)は、若手カメラマンのジェシー(ケイリー・スピーニー)を助ける。
自爆テロによる派手な爆破シーンは、映画が多くの弾薬を使って、交戦を繰り広げる序曲となっている。この映画は、アメリカの内戦を縦軸として、横軸にはリーとジェシーの師弟関係を据える。
記者とカメラマンの一行は陸路でワシントンDCへ
自爆テロが起きた夜、リーはホテルのテレビに映る大統領の顔にカメラを向ける。これまでアメリカ国外の戦争や内戦の写真を撮ってきた。何年にもわたって、戦場の写真をアメリカに送ってきたのは、そうした悲惨な現実からアメリカ自身が学び取り、国内を戦場にしてほしくない、という思いからだった。
しかし、アメリカの内戦を目の前にした今、そうした思いはアメリカには届いていなかったのではないか、と疑問を抱き始める。今までの仕事の意味を自問自答するようになる。
そんな中、リーと記者仲間のジョエル(ワグネル・モウラ)は、1年以上も取材を受けていない大統領の単独取材を取るため1000キロ以上離れた首都ワシントンDCに陸路で向かうことを決意する。