ただこの「当事者のケア」をするというのは理想です。

現実には難しく思えるケースもあるでしょう。「なぜ私がそんなことをしなければならないんだ、悪いのは向こうなのに」との思いがあるうちは採用できません。

そこで次善のメソッドを用意します。誰でもいいから、他の人との関係をケアするのです。私でいえば妻、または娘との関係をケアするという意味になります。

ADVERTISEMENT

「そんなことをしてなんになる」と今度は思われるでしょう。

当事者とこじれたのに、他の人との関係をよくしても効果はなさそうです。

それはそのとおりです。しかし、誰とであっても関係をケアすれば、自分には関係をケアできるだけの能力があると具体的に実感がもてます。

その能力は潜在的に、いまこじれた「より難しい人との関係」をケアできる可能性を感じさせます。ようは、妻との関係をよりよくできるなら、編集さんとの関係だってよくできるだろうというわけです。

この感覚を日頃から強化しておくと、私のような人間でも「心が傷つきにくくなった」と思えてくるものです。

<POINT>本人でなく、第三者との関係をケアするだけでも効果的

100%相手が悪くとも傾聴する

ここで大事な仮定として、「自分はまったく悪くはなく、上司が100パーセント悪いにもかかわらず厳しく叱責された」としましょう。

言うまでもなくあなたは怒り心頭で、とても仕事をする気になどなれません。転職を検討せざるを得ないほどです。

にもかかわらず私は、できるだけその上司の話に耳を貸す、つまり「傾聴する」のが消耗しないために欠かせないと考えます。

この種の「仕事術」は必ず批判されます。時に厳しく非難されます。

私はそれを承知しています。それだけに、少しでもマイルドに伝えられないかとあれこれ考えざるを得ません。

でも、自分に非はなく、相手が完全に「悪」であったとしても、やはり傾聴しなければ、あなたが消耗してしまうと私は経験から思うのです。