「若い頃は性欲という悪魔の声に随分悩まされて、どれだけ失敗してきたか」
新刊『老いては「好き」にしたがえ!』を出したばかりの片岡鶴太郎さん(68)インタビュー。アンチエイジングが盛んな時代でも、鶴太郎さんが「老い」を否定しない理由とは?(全2回の1回目/後編を読む)
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鬱々としていた50代
――鶴太郎さんは50代前半に鬱々とした状態に陥ったことがあったそうですね。
鶴太郎 あれは更年期だったんでしょうね。ハッと気がつくと一点を見つめて、ネガティブな思考になっている自分がいて。ああ、ヤバいな、と。あれはちょっとしんどかったですね。
――何か原因があったんでしょうか?
鶴太郎 漠然とした不安はありました。50代になると、上の世代はまだ元気だし、下からはどんどん新しい人が出てくるし、ちょうど狭間になっていて、ものすごく息苦しさを感じていました。
――それはタレントとして、ということですか?
鶴太郎 あと、画家としても40歳で始めて10年経ってるから、だんだん新鮮味がなくなってきて、これからどうやっていけばいいんだろう、っていうのが見えなかったんですね。
――そこから立ち直るきっかけになったのは、同い年の方々で集まる会に参加されたことだったんですよね。
鶴太郎 はい、昭和29年生まれの人の「午年の会」っていうのに誘ってもらって。当時は自民党の幹事長だった安倍晋三さん、今は神奈川県知事になった黒岩祐治さん、フランス料理シェフの三國清三さんとか、いろんな方がいたんですね。
それぞれ生まれも育ちも職種も全然違うんですけど、同い年っていうだけでなんかわかり合えるんですよ。そこでちょっと救われました。「同病相憐れむ」みたいな感じで、ああ、みんなそうなんだ、と思ってちょっと楽になりました。同い年の方は大事にした方がいいですよ。
――鶴太郎さんは芸人として活躍されていた時期に、突然ボクシングや俳優業を始めて、路線を変えられたじゃないですか。そこで驚いたり戸惑ったりした人も多かったと思うんですが、ご本人はそういう世間の反応はあまり気にされなかったんでしょうか?