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 その結末は読者に衝撃を与えた。ノンフィクション作家の関川夏央は、《わたしはこの物語を何度も読んだ。そしてそのたびに最終章に至って泣いた。なぜ死なせなければならないのか、と大の男が泣きながら「女の子の感性」を恨むのであった》と本作の書評で告白している(『知識的大衆諸君、これもマンガだ』文藝春秋、1991年)。内田のもとには「ひどすぎる!」という怒りの手紙がいくつも届き、なかには「もうあの頁はノリで貼り付けてやりたい」というものもあったという。

ちよみを死なせるのはつらく、何度もやめようと思ったが…

 しかし、内田自身も、ちよみを死なせるのはつらく、それを思いついたときから何度もやめようと思ったが、《ちよみがずっと生きつづけてしあわせだけがあるというのは、今の私にとっては噓なの》として、描ききったのだった(「読んでくれたみなさんへ」、『南くんの恋人』青林堂、1987年所収)。その後は悲しみのあまり、単行本のカバーイラストを装幀を担当したイラストレーターの南伸坊から頼まれながら、どうしてもうまく描けず、自身の思いをつづってFAXで送ったところ、南はその意を汲んで代筆してくれたという(「あとがき '93」、『南くんの恋人』新装改訂版、青林堂、1994年所収)。南は掲載誌の『ガロ』の元編集者であり、何かにつけて内田を助けてくれる存在であった。後年、内田は《やっぱりこの南くんは、伸坊さんなんです、私にとって》とも明かしている(「文庫あとがき」、『南くんの恋人』文春文庫、1998年所収)。

 内田春菊さん ©文藝春秋

ドラマではどう扱われてきたのか

 原作者が苦しみ抜いて描いたラストだけに、ドラマでも扱うのは難問であった。最初の1990年版では、南くんと旅行に出かけたちよみが風船に乗ったところ不意に飛んでいってしまい、それを追いかけた南くんも崖から落ちて大けがを負う。そのあと一瞬、ちよみの死を匂わせる場面があるものの、ラストでは彼女が無事に帰ってきてハッピーエンドとなっていた。

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 続く1994年版では原作にほぼ沿って、ちよみが南くんと修学旅行で行った長崎のハウステンボスを二人きりで再訪し、存分に楽しんだあとで急に死んでしまう。本作のちよみは第1話で交通事故に遭ったはずみで小さくなったが、実際にはすでに死んでいたという設定で、最終話で思いを遂げたことから姿を消したのである。