バスケ部のエースだった大学生の南浩之がある日突然、身長15センチのサイズに小さくなってしまい、幼なじみで恋人の高校生・堀切ちよみのもとに駆け込むと、家族にも明かさないまま彼女とこっそり同棲生活を始める――。そんな突飛な設定の青春ドラマ『南くんが恋人!?』がテレビ朝日系で絶賛放送中だ。

 南くんを演じるのはダンス&ボーカルグループのFANTASTICS from EXILE TRIBEの八木勇征(27歳)、ちよみを演じるのはTBSスター育成プロジェクト「私が女優になる日_」で初代グランプリに選ばれた飯沼愛(21歳)である。

テレビ朝日系『南くんが恋人!?』ドラマ公式Xより

内田春菊の『南くんの恋人』が5回目のドラマ化

 今回のドラマは、内田春菊のマンガ『南くんの恋人』および『南くんは恋人』を原案にしている。このうち先に発表された『南くんの恋人』はじつに9年ぶり5回目のドラマ化となる。回数でいえば筒井康隆の小説『時をかける少女』と並んだ。いずれもSF的な設定による青春劇で、各時代を代表する若手俳優を起用してドラマ化(『時かけ』の場合は映画化も)されてきた点で共通する。

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『南くんの恋人』では、小さくなるのはちよみのほうで、南くんが面倒を見ている。原作者の内田春菊はこのアイデアを、同じくマンガ家の久住昌之(代表作に原作を担当した『孤独のグルメ』など)から「内田さんの描く女の子はプヨプヨしていて柔らかそうだから、女の子が小さくなる話とかもいいかもね」と言われて思いついたという(『ガロ』1994年2月号)。

 内田はこのアイデアによる最初の作品「言いなりになりたい」を1985年、月刊誌『写真時代Jr.』(白夜書房)に発表した。これを短編集『春菊』(青林堂、1985年)に収録すると、読んだ人から「あれ、かわいいですね」と言われ、続きを描こうと思い立つ。こうして翌1986年から「南くんの恋人」と題してマンガ専門誌『ガロ』(青林堂)で8号にわたり連載、好評のうちに1987年には単行本を同じ版元より刊行した。

 ちなみにヒロインの名前「堀切ちよみ」および「ポチャポチャとした感じ」は、80年代のアイドル・堀ちえみから着想したと、『ガロ』前掲号のインタビューで内田自ら明かしている。

ヒロインの名前「堀切ちよみ」の名前は堀ちえみからとったものだという。堀は1982年に歌手デビュー(『堀ちえみ 40周年アニバーサリー CD/DVD-BOX』より)

 原作の南くんもまたぽっちゃり体型で、メガネをかけたおっとりしたキャラクターとして描かれた。彼は小さくなったちよみのため、ドールハウスらしき家を与え、服を手縫いでつくってやったり、ときには勉強嫌いな彼女に「たまには勉強しろよ」と親みたいに発破をかけたりもする。