「何で殺したんだ!」という抗議の手紙も

 脚本の岡田惠和もさすがに書く段になって悩んだという。放送後も《「何で殺したんだ!」という抗議の手紙なんかもらったりして、そういうのもらうと、なんか本当に自分が殺人者になったみたいな気分で、つらいもんなんです。で、のちにスペシャルで、生き返らせたりして、ちょっと強引だったけど》と著書で述懐している(『ドラマを書く』ダイヤモンド社、1999年)。

 これが2004年版では、二人が旅先で交通事故に遭い、ちよみではなく南くんが危うく死にかけるも、ある登場人物が身代わりになる形で生還する。2015年版でも南くんは事故で死にかけるが、ちよみとの愛の力で生還、それと同時に彼女も元の姿に戻るという、原作ともそれまでのドラマとも大きく違う結末となった。

30年前の『南くんの恋人』と同じ設定がほのめかされていた

 ひるがえって今回の『南くんが恋人!?』では、南くんが自分と同様に身体の小さくなった女性(国仲涼子)と偶然出会い、彼女のセリフのなかで30年前の『南くんの恋人』と同じく「事故に遭ったときすでに死んでいた」という設定がほのめかされていた。

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『南くんが恋人!?』第7話の予告では2人のタキシード&ウェディングドレス姿も(ドラマ公式インスタグラムより)

 一方で、南くんは小さくなる以前から、湘南の海岸に面した丘にそびえる「お城」ことラブホテルにいつかちよみと一緒に行こうと約束していた。セックスを暗に示しているのはあきらかで、先週8月27日放送の第6話ではついにその約束が果たされる。が、それは時間が巻き戻り、南くんが小さくならなかった仮想(?)の世界でのことであった。無情にも世界はまた元に戻ってしまうのだが、実際に二人の約束が叶う日は来るのだろうか。

テレビ朝日系で放送中の『南くんが恋人!?』(ドラマ公式Xより)

 なお、今回のドラマの原案のひとつ『南くんは恋人』では、小さくなった南くんが、事故でけがを負って死を覚悟し、ある行為におよぶ。それは、当記事の#1で紹介した中園ミホのエッセイでの「男性が小さくなりたくないのは愛し合っている相手とセックスができないから」との指摘に対する一つの答えとも受け取れた。

 今回のドラマではまた、小さい南くんに気づいてしまったちよみの父(30年前に南くんを演じた武田真治が演じている)が今後どう出るかを含め、まだたくさんの謎が残る。ゆずの歌う主題歌のタイトルどおり果たして「伏線回収」は成るのか、後半の展開にますます目が離せない。