欽ちゃんとスミちゃんの本当の関係は――。8月31日、「24時間テレビ」(日本テレビ系)で、萩本欽一さんと妻の澄子さん(スミちゃん)を描いたドラマ「欽ちゃんのスミちゃん ~萩本欽一を愛した女性~」が放送される。

 

萩本さんが、文藝春秋の対談連載「有働由美子のマイフェアパーソン」でスミちゃんとの日々を語った。

 スミちゃんから「ありがとうね」と……

 有働 欽ちゃんのエッセイ集『ありがとうだよ スミちゃん』(文藝春秋)、読み応えがありました。3年前に亡くなった、スミちゃんこと妻・澄子さんとの愛妻物語には泣かされましたし、仕事の話などは大いに学んで笑いました。ぜひみんな読んで泣き笑いしてほしい! 私の印象に残ったことでいうと、「引退なんて偉そうなことは言えない」とありましたが。

 萩本 だって引退って何かを成した人がするものじゃない? 大したことしていないのに恥ずかしくて言えないよ。それにその言葉や行動に合ったタイミングって大事だよね。それを決めるのが難しい。

 有働 たしかにタイミングを見誤ると、引退に限らずどんな言葉もチグハグな印象になりますね。

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有働氏のツッコミに欽ちゃんの答えは…… ©文藝春秋

 萩本 オレが一番いいタイミングだなと思った言葉は、スミちゃんが亡くなる少し前に「ありがとうね」って言ってくれたこと。オレ、すぐ返したの。「ありがとうってアンタから聞いたこと1度もないよ。いやー、いい言葉が聞けたね」って。今まで言ってほしいとも思わなかったけど、一番いいタイミングで言われたから、病室で「やったー!」って飛び上がるように大はしゃぎして。こんな幸せな言葉だと思わなかった……という話が、本のタイトルにまでなるとは思わなかったけどね。

 有働 冒頭のエッセイですね。私、その時点で泣いちゃいました。

 萩本 面白いものでね。コメディアンでもそういう現場にいると、泣けるような話にしようとして物事を進めるんだ。

 有働 たとえばどんなことが?

 萩本 亡くなる前日、スミちゃんはもうほとんど聞こえていないと看護師さんに言われていたんだけど、「スミちゃん、子どもたちをいい子に育てたね」って言ったら首を振ったわけ。あれっ、聞こえてると思って、横にいた義妹に「スミちゃん泣いてるよな」って言ったら、「いや、泣いてないよ」って即答。

 有働 あら(笑)。

 萩本 オレからするとホロッと泣きたかったの。「スミちゃん嬉しくて泣いてるよ」と言ってもらったら「ちくしょう、オレまで泣かせるなよ」と言おうとしていたのに。またその時の義妹の顔が嫌なんですよ、アゴを伸ばして覗き込んで(笑)。いい物語をぶっ壊すなと思って。本にはそのオチは書いていないよね。

 有働 はい。本にない面白い話を聞けました。

 萩本 そうでしょう。

 有働 スミちゃんは神奈川県二宮町の自宅で子育てをして、東京で仕事をしている欽ちゃんには「忙しいのだから、別に来なくてもいいわよ」と言っていたんですよね。でも欽ちゃんがたまに帰ってくる日には必ずお化粧をしていたとか。