世の中には、解決に至っていない犯罪が存在する。俗に言う「未解決事件」である。

 何の手がかりもないまま何年も経過したり、公訴時効を迎えて迷宮入りになったりしたケースも少なくない。しかし、ふとした出来事が、未解決だった難事件を一気に解明に向かわせることも時として起こり得る。捜査関係者の執念なのか、あるいは天の配剤か。

 意外なきっかけで真相が明らかになった“元・未解決事件”を追う。

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女性が惨殺されたホテルが入っていたマルビルは大阪のランドマークだった(現在は解体工事中) ©AFLO

 1994年1月16日、大阪マルビル(大阪府大阪市北区梅田)内の大阪第一ホテルで女性が惨殺された。事件の現場となった大阪マルビルは円筒形のフォルムが特徴的で、大阪を代表する繁華街のランドマークとして今日でも世間に広く知られている。

 被害女性(当時26歳)は、コンピュータ関連の人材派遣会社で事務職として働くかたわら、デートクラブ(派遣型風俗店)にも登録していた。この日は日曜日で、昼職は休みだったのだろう。夕方の午後5時20分頃、第一ホテルに宿泊する男性客のもとに派遣され、犯罪に巻き込まれてしまった。

写真はイメージです ©AFLO

死因は頸部圧迫による窒息死、床には大きな血だまりが…

 大阪第一ホテルのチェックアウト時間は午前11時。翌17日の午後になっても男性客がカウンターに姿を見せず、客室に内線電話を入れても応答がなかったため、不審に思ったホテル従業員がマスターカードで客室のドアを開けた。しかしそこに男性客の姿はなく、変わり果てた女性の遺体が残され、床には血だまりができていたのだ。

 警察の司法解剖の結果、死亡推定時刻は16日の午後6時頃。女性が入室してから、わずか40分で惨劇が繰り広げられたことになる。

 被害女性は顔や頭部を十数回殴打されたあとに首を絞められており、死因は頸部圧迫による窒息死だった。犯人は被害女性を執拗に殴りつけたと見られ、床には大きな血だまりができていた。その凄惨さから、犯人の狂気がうかがえ、怨恨による犯行の可能性も疑われた。