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 ビデオ映像とDNA。一見すると決定的な証拠が揃っているように見えた事件だが、それが容疑者の特定に結びつくことはなく、なんと13年もの月日が流れてしまった。やがて事件は風化し、公訴時効の成立(当時は15年)が迫る。誰もが「完全犯罪」と思った強盗殺人事件。

 だが、この“未解決事件”は、思わぬ角度で再び動き出すことになる。きっかけは、女性の下着だった。 

 2006年の秋ごろから2007年にかけて、大阪府茨木市周辺では民家の敷地内に女性用の下着がバラまかれる珍事件が頻発していた。ある家では、自家用車のアンテナにパンストが被せられており、ある家ではパンストのつま先とパンティを結んだものが植木に引っ掛けられていた。

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下着バラまき犯のDNAが殺人容疑者とまさかの一致

 他にも自転車のハンドルにパンストが巻き付けられていたり、庭先に女児用のパンツが投げ捨てられていたり、ポルノ雑誌のヘアヌード写真が敷き詰められていたり……。警察には近隣住民から苦情が寄せられ、その数は何と100件以上。警察はこの“変態事件”の捜査のために深夜のパトロールを強化した。

女性の下着がバラまかれた奇妙な事件から… ©AFLO

 警察は「変質者には前歴があるケースが多い」という経験則にもとづき、下着バラまき犯を特定するために、庭先に捨てられていた下着に付着していた垢を採取。

 そして鑑識のDNA型鑑定に回したところ、なんと13年前に大阪第一ホテルで女性を殺害した容疑者が室内に残していた体液のDNAと一致したのである。

 女性用の下着をバラまく事件は、突如として未解決の凶悪殺人事件の捜査に変貌した。

 13年間も手がかりがなく、時効目前の完全犯罪と見られていた事件の容疑者が急浮上したことで、捜査関係者は一気に色めき立った。