1994年に大阪マルビル内の大阪第一ホテルで発生したデート嬢の女性(当時26歳)が殺害された事件は、有力な手がかりが得られないまま13年が経過し、公訴時効の15年が近づいていた。
だが、大阪府茨木市周辺で発生した女性用の下着バラまき事件で採取されたDNA鑑定から、捜査は急展開を迎える。
だが、この下着バラまき犯が13年前の女性殺害犯と同一人物であるならば、相手はホテルの部屋に1つの指紋も残さず、13年もの間まったく尻尾を掴ませなかった用意周到な男ということになる。ここで逃がすわけにはいかない。
大阪府警茨木署は慎重に捜査を進め、2007年12月2日、民家に女性用下着を投げ捨てるなどの迷惑行為を起こしたとして、茨木市内に住む会社員・押谷和夫(当時48歳)に任意同行を求め、廃棄物処理法違反の容疑で逮捕した。まずは「下着バラまき犯」として身柄を確保したのである。
職場の同僚や近隣住民が押谷を疑わなかった意外な理由
そうして押谷の頬の皮膚から採取したDNAを鑑定した結果、民家にバラまかれた女性用下着に付着した垢と一致。そして、1994年に大阪第一ホテルの殺害現場から採取した体液とも一致したことを受けて、12月24日に強盗殺人容疑で再逮捕となった。公訴時効まで、すでに2年を切っていた。
押谷は、下着の投げ捨てについては「近所の人が嫌がると思うと楽しかった」と認めたが、殺人については「はっきりと覚えていない」と供述している。
それにしても1994年の殺人事件当時、容疑者である押谷の映像は大々的に公開されていた。にも拘わらず、押谷と日常的に接していた職場の同僚や近隣住民は、彼に疑いの目を向けることはなかった。その理由は押谷が「善良な市民」という完璧な仮面をつけていたからだ。