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薄化粧に口紅、ワンピース型の女性用水着を着用した姿で…

 阪急百貨店の経理としてマジメに働き、1995年に妻が病死後はシングルファザーとして3人の子供を育てるマイホームパパ。日頃からきちんとした身なりで、自宅前の道路を毎朝掃除し、言葉遣いも丁寧で近隣からの評判も良かった。

 職場の同僚も「勤務態度は非常に真面目」と彼の印象を証言している。押谷が見せる“表の顔”があまりに品行方正であったから、犯罪とは結びつかなったのだろう。

 だが押谷の本性は、“表の顔”とはかけ離れていた。

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 殺人事件から6年後の2000年夏、押谷は民家に忍び込もうとして取り押さえられたことがある。薄化粧に口紅をし、さらにワンピース型の女性用水着を着用し、下半身はパンティストッキング姿であった。

 しかし押谷と顔見知りで、日頃の真面目な姿を知っていた警察官は「死んだ妻の下着の処理に困った」という言い訳にほだされ、厳重注意だけで済ませていた。

改装が始まる前の阪急うめだ本店 wikipediaより

出向先の阪急の子会社で4年間にわたって合計2億円を横領

 さらに2001年末にも、出向先の阪急の子会社で4年間にわたって合計2億円を横領していたことが発覚している。経理という立場を利用して、長年かけてコツコツと少額を騙し取り続け、その総額が約2億円にまで膨れ上がっていたのだ。社内調査には「株式投資に使おうと思った」と釈明し、全額を弁済したため刑事告訴は免れたものの懲戒解雇されている。

 押谷は丹念に練り上げた“表の顔”でみずからを粉飾し、日常的に犯罪行為を繰り返していたのである。そしてついに、自らの性癖が仇となり御用となったわけだ。

 犯人逮捕によって余罪を含めて犯行の全容が追求されていくと思われたが、その翌年、事件はさらに思いもよらぬ結末を迎えることになる。