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22歳の息子にも“脳みそ盗み”が発覚して…

 事件はそれだけで終わらなかった。

 じつはこの職員には22歳の息子がいて、ちょうどそのとき軍隊にいて朝鮮半島へ駐屯していた。その息子も怪しいという話があったのだ。

 そこで取り調べたところ、こちらもビンゴだった。息子もじつは、前年の11月から軍隊入りする6月までの約半年のあいだ、父の代理として火葬場で働いていた。

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 1月某日、越谷のとある男性の火葬を依頼された際に、遺体から脳しょうを取りだし、これを大澤町(現・越谷市大沢)の男へ渡し、謝礼を受け取っていたことが判明したのである。そのほかにもう一件、同様の“副業”を自白し、事件は幕を下ろした。

写真はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 このときの新聞報道では、取りだされた脳しょうを「カルメラ焼の様になった脳しょう」と表現されている。

 現代では考えられないようなことが過去に起こっていた。時代といえばそうかもしれないが、この状態からよく現代のような洗練された状態になったものだとつくづく思う。おそらく現役の火葬場職員でさえ意外と知らないので、にわかに信じがたく感じるだろう。

火葬中の脳のなんとも言い難いニオイ

 ちなみに脳は火葬する際も気をつけるべき部分でもある。

 たとえば、検死されたご遺体の場合は開頭手術後なので、火葬中にパカっと頭が開くことがある。そのときに脳が露わになることがあり、たまたまそのタイミングでデレキ(金属の長い棒)で作業していて脳に当ててしまうこともある。

 このときのなんとも言い難いニオイは非常に辛いものがある。ついた部分をバーナーでデレキが赤くなるまで加熱するのだが、それでもニオイは残ってしまう。

 人体のなかでも非常に脆く、薄ピンク色のつるんとしたその部分を、こういった事件のように破壊するなど、働いていた身としても到底考えられないことである。