「もっとアホアホダンスでいいんですよ」
前作「ふるさと」では安倍がメインボーカルを務め、ほかのメンバーはサポートに回ったが、この曲では全員にソロパートが用意された。それだけに皆が前に出ようと闘志を燃やした。《あの曲のときは“歌の中で、誰がいちばん目立てるか!?”みたいな戦いでしたね、うん》とは市井の証言だ(能地祐子『モーニング娘。×つんく♂』ソニー・マガジンズ、2002年)。
振り付けも完成する直前につんくが変えてしまった。担当した夏まゆみは当初、クールでカッコいい振りをつけていた。メンバーも「何だかモーニング娘。ってカッコよくなったよね」と言いながら、猛レッスンしていたが、つんくはそれを見て《新人ばかりのモーニング娘。にはあまりにも難易度が高すぎて滑稽に映ってしまう》と思い、《“そうでなくって先生、この子たちが踊れる最大限の魅力を引き出したいから、もっとアホアホダンスでいいんですよ”という話をして、その日のうちに手直ししてもらったんです》という(『女性セブン』前掲号)。
夏はそんなつんくの要望に見事に応えた。イントロの振り付けは「トイレを探すモーニング娘。」というコンセプトで、メンバーには「トイレ行きたいよぅ、漏れちゃう」と内股のポーズを真似させたりしながら教えたという(『週刊文春』2000年6月1日号)。
発売直前まで曲を差し替えようか、という変な空気が…
こうして曲ができあがったものの、正直、つんくも心のなかでガッツポーズが出せるほどには自信がなかった。周囲からも反応らしい反応はまったくなかったらしい。のちに彼が語ったところによれば……
《レコーディングが終わった時点で、いつもなら、好きにしろ嫌いにしろ関係者からリアクションがあるのに、「LOVEマシーン」の時はゼロだったんですよ。要するに、コメントできないって言われた。どうなることかとみんなが思ってたと思います。僕もディレクターと「ダメやったら共倒れやな」とか言って、相当覚悟してましたね。発売直前まで曲を差し替えようかっていう変な空気が流れたくらい》(『婦人公論』2000年3月7日号)
だが、関係者たちの心配は杞憂に終わる。「LOVEマシーン」は発売後、1週目より2週目以降の売り上げが増え、有線リクエストにも数ヵ月にわたってランクインする。さらに年末の紅白歌合戦で歌ったことで年が明けて2000年に入っても売れ続け、当時のアイドルソングとしては異例のロングヒットとなった。