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ホンダもトヨタもアメリカ進出に失敗した過去が…

入山 ちなみに池上さんはこの本の対談のなかで、たとえばこのあたりが特に面白かったというところがありますか?

池上 たとえば、トヨタはカトリックでホンダはプロテスタントだという比較や、「どんなビジネスも最初はカルト」と言われると、確かにそうかもしれないなって思い当たるところばっかりでしたよね。一方で、「なぜイスラム教はティール組織が作れるのか」という視点で見るのは、まったく初めてだと思いましたね。

入山 経営学は人と組織の学問で、会社も宗教も人と組織でできていますから、実は結構なぞらえられるところが多くて。池上さんと対談を始めた最初の頃、池上さんが「ホンダはプロテスタントっぽいよね」というふうにおっしゃって、じゃあ「トヨタはカトリックですね」という話になった。それから、宗教をテーマに対談していきました。

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池上 トヨタって本当に長い歴史があって、いろんなことをやっています。それに対して、ホンダはオートバイというか、二輪にモーターつけただけみたいなところから始まって。四輪の自動車を作ろうとしたら、当時の通産省(現在の経済産業省)から「やめろ」って圧力かかっているんですよね。「日本には自動車会社がいっぱいあるのに、なんで今さら、もう一つ四輪の自動車会社を作らなきゃいけないんだ。トヨタも日産もいすゞもマツダもあるだろう、なんでオートバイの会社が自動車を作るんだ」って圧力を受けた。それでホンダが猛烈に怒って、じゃあ目にものを見せてやるという当時の通産省に対する反骨精神から、四輪の自動車をつくってみせたんです。

入山 ホンダってその辺がすごく面白いですよね。フロンティア精神や、面白い気概のある会社ですよね。オートバイを売ろうとアメリカへ行ったら、最初全然売れなかった。なぜかというと、当時のアメリカって大型バイクなんですよね。だから、ホンダも「アメリカ人は大型バイクしか乗らないだろう」ということで、ハーレーダビッドソンみたいな大型バイクを売りに行ったんですね。だけど、ホンダはもともと小さなスーパーカブをつくっている会社だから、大型バイクの技術がなくて、すぐに壊れたらしいんですよ。バイクの耐久性が全然ないし、売れないし困ったなと思っているときに、近所で小さなバイクに乗ってピザを宅配しているのを見て、「小さなバイクのほうが売れるんじゃないか」と思ってスーパーカブを発売したら、大ヒットして。

池上 それを言ったら、トヨタだって、今からだと信じられないエピソードもあるんですよ。アメリカへの輸出を考えて、1970年代初めにアメリカのフリーウェイを走らせてみたら、時速100キロを超えると車体からカタカタと音が出た。途中で路肩に車を止めて、「これはダメだ。まだアメリカへの輸出は無理だ」と言ったという。


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