いい会社は宗教っぽい
入山 そんな池上さんに文化放送に来ていただいた理由のひとつが、私と池上さんの共著という形で『宗教を学べば経営がわかる』という対談本を出したからです。池上さんがいっぱい本を出されているなかで、これはどういう位置づけになりますか?
池上 私は宗教についていろいろ書いたり解説したりしていますが、この本は入山さんという経営学者とコラボすることによっていわゆる化学反応が起きて、宗教を経営的な観点で見ることができました。本当に新しい発見ばかりでしたね。宗教をそういう観点で見ることができるのか。経営学的に合理的な運営をしているから、今も長く宗教団体は続いているんだな、ということの発見でしたね。
入山 嬉しいです。この本は、池上さんと5、6回お話しさせていただいて、それを書籍化したものなんです。私は宗教に関して素人なので一生懸命勉強して、必死に池上さんと議論をさせていただいたんですけど、横で聞いている編集者の皆さんは「めちゃくちゃ対談が面白かった」って言ってくださって。やっぱり今までにない切り口だったんでしょうね。
池上 入山さんが本当に真面目なんです。大学の先生なのに、毎回私に「宿題を出してください」って言われて。「じゃあ、少なくともこの本を読んできてください」という形で宿題を出しました。そうすると入山先生がちゃんと読んだ上でいろんなことを聞いてくださるというのが、立派だなと思いました。
入山 逆に池上さんの熱心な先生ぶりもありがたくて。「本を3、4冊みつくろってくださいませんか」ってお願いすると、ギリギリ3、4日くらい前に「これも読んどいた方がいい」って追加してくださって。おかげで本当に私も勉強になりました。もともと私は経営学者として「いい会社は宗教っぽいところがある」という認識を持っていました。なので、宗教について学びたくて池上さんと対談させていただく機会がいただけたので書籍化までしたわけです。実際にこの本を私のまわりの経営者の方々に読んでもらっていて、元財務次官の人も読んでいるらしいんですけど、みんな「めちゃめちゃ面白い」「すごく共感する」って言うんですよね。人を動かすときって、最後はやっぱり心をつかまなきゃいけないから、宗教的な力みたいなものは結構大事なんだというふうにおっしゃっていて。経営者から共感を得ている本だと思っているんです。
池上 入山先生が「腹落ちっていうのが大事だ」とよくおっしゃいますけど、言われてみると、宗教って本当に信じるっていうのは、言わば腹落ちしたってことなんだろうなと思いましたよね。