8月7日に発売されたアルバム「ANISON COVERS 2」のジャケットで34年ぶりにビキニ姿を披露したことでも話題となっている歌手の森口博子さん。アルバムは、オリコン週間アルバムランキング8位、Billboard JAPANトップアルバムセールス週間ランキング5位を獲得とヒット中だ。

 そんな森口さんの不遇だったデビュー当時、そして自身の音楽人生と切っても切れないガンダムとの関わりについて聞いた。(全3回の1回目/続きを読む

森口博子さん ©深野未季/文藝春秋

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「声が良かった」という理由でスカウト

――森口さんとアニメの関わりは1985年、17歳のときのデビュー曲「水の星へ愛をこめて」からですね。アニメ「機動戦士Zガンダム」の後期オープニング曲でした。どういった経緯でこの曲を歌うことになったんですか。

森口博子さん(以下、森口) もともと4歳から歌手を目指して、いろいろなオーディションを受けていたんですが、ずっと落ち続けていたんです。Zガンダムの主題歌はキングレコードのディレクターの大場龍夫さんが歌う人をオーディションで探していたんですが、なかなかいなくて。そんな時、NHK「勝ち抜き歌謡天国」の全国大会で準優勝をいただいたことがきっかけで「声が良かった」という理由でスカウトしていただきました。

――「水の星へ愛をこめて」の作詞家である売野雅勇さんが雑誌のインタビューで「大場さんは森口さんを大切にしていた」と話されていました。

森口 売野さんが? 嬉しいですね。大場さんは私を身内のようにかわいがってくださって、ご自宅に下宿させていただいていたんです。だから家族みたいな感じで。奥様も毎日私の喉のことを気にしてくださってました。「水の星へ愛をこめて」のレコーディングの際も大場さんに「この曲は君が大人になっても何十年って経っても歌える歌だから、言葉を大切に語尾を丁寧に、上手に歌おうと思わなくていいからね」とアドバイスをいただきました。「言葉を大切にする」という教えは今の私の歌のベースになっています。売野さんが書かれた美しくて普遍的なデビュー曲が、大場さんのおっしゃった通り何十年と沢山の方々に愛されて、生涯の宝物です。

森口博子さんのニューアルバム「ANISON COVERS2」 カバージャケットでは34年ぶりのビキニ姿を披露

レコード店にもあまり置いてない…当時のアニソンの扱い

――「水の星へ~」は今やアニソン屈指の名曲として知られていますが、当時はアニソン自体がまだまだ扱いが地味な時代で、曲の紹介なども他のアイドルがカラーの中、森口さんは白黒のページと差がありました。

森口 当時のアニソンって今ほどフィーチャーされるものではなかったので。レコード店にもあまり置いてないんです。プレスが少ないんですよ。私のレコードが置いてないからファンのみんなから「どこに行ったら買えるんですか?」って言われました。

 歌は4歳の頃からの夢で、やっとデビューできて、しかもアニメの主題歌で「毎週みんなに聴いてもらえるんだ」と期待していたらこの扱いという。事務所も私の売り出しには力を入れていなくて「ガンダムの主題歌で声が良いってスカウトしてくださった方もいるのに、なんで売ってくれないんだろう」って子供ながらに思ってました。