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「グラビアをやっているとき、胸が大きいことは面白い武器になると思っていました。いまだに、巨乳というちょっといびつな存在をどうにか有効活用しないと日常では持て余してしまうから、この肉体を活かしてくれる場と役を常に求めているんです」(2021年3月「プラスアクト」より)

 武器になるような自分の肉体を「いびつ」と表現する小池。もしかしたらこういう意識も、長年の男性優位な見地からそう思わせてしまったともいえるかもしれない。そこの判断はここではできない。ただ、自分の身体を個性ととらえ、それが生きる場所でできるかぎりのことをして生きる、それもまた「新宿野戦病院」における「平等」なのではないだろうか。なにもかもフラットにして、いびつさをいびつではないとしてしまうのではなく、個性として認めることで生きる場所があることを小池栄子は知っている。

 ちなみにこのインタビューをしたとき、小池は井上ひさしの舞台『日本人のへそ』に出演していて、岩手から上京してきたなまりの抜けない少女がストリッパーから身を立て政治家の女、ヤクザの女と転身していく役を演じた。小池はその役について、成り上がっていくのか堕ちていくのか、どう感じるかは人それぞれと解釈していた。

 コンプライアンスに厳しい現在、セクシャルさを強調するような表現がしづらくなっているように感じるが、隠したい人もいる一方で、生かしたい人だっているのだろう。

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『新宿野戦病院』のエンディングでは、小池演じるヨウコはノースリーブのドレスを着てアクセサリーもつけてゴージャスな雰囲気で軽やかに歌舞伎町を歩いている。また、第6話ではSM女王に扮した。演技派として開花したらセクシャルさを強調した役から卒業するのではなく、必要とあれば肌の露出も厭わない。この懐の大きさがすばらしい。SM女王の扮装時は、ガニ股で歩いたりしてコミカルな動きも見せた。セクシーなだけよりも、セクシーかつコミカルというほうが、むしろ難易度が高いような気がする。

『新宿野戦病院』公式Xより

『地面師たち』に見る小池栄子の10年後

 配信ドラマ『地面師たち』(Netflix)ではそのセクシーかつコミカルな魅力を存分に発揮している。実際に起こった「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルに製作されたオリジナルドラマで、土地の持ち主を装って100億円もの詐欺を働くグループの暗躍はじつにスリリングで、全話イッキ見してしまう人が続出している。

 小池栄子は地面師グループのひとりで、地主になりすます人物を手配する役割を担う麗子を演じている。老人や生活に苦しむ人をあの手この手で取り込んで、さも土地の持ち主であるかのような演技を指導する役割なのだが、あるとき用意した役者(尼僧役)にドタキャンされ、責任をとって自分で演じる羽目に陥る。頭を剃って尼僧になりすますエピソードが小池栄子の最大の見せ場である(実際坊主にしているわけではなく特殊メイクと思われる)。

 ウエーブのかかった長い髪をしぶしぶ切って剃髪した麗子が、いざ自分で演じると、なかなか決められたセリフが覚えられず困ったり、本物の尼僧が戻ってきてしまいそうになって焦ったりと、サスペンスとコメディの大きな振り幅を作り出す。

『地面師たち』ティーザーより

『地面師たち』ではいわゆる男性グループの「紅一点」であり、しかも、一番下っ端で成功報酬も低い役割という、せっかくさまざまな役を演じて築いてきたキャリアがふりだしに戻ったような印象もあるが、海外でも注目されている配信ドラマで、まずはコメディもできそうな俳優として認知されるのもいいだろう。これを機会に小池栄子の可能性の大きさをもっと海外へ広めることができたなら、小池栄子の10年後はきっと明るい。