朝靄(あさもや)煙る観音崎沖に見慣れぬシルエットを現した巨艦、「スキージャンプ台」のような反りあがった飛行甲板、それにそこにびっしり並べられた艦載機に、横須賀に駆けつけた人々の目は惹きつけられる。

©宮嶋茂樹

空母「カヴール」の日本初寄港

 あれこそがイタリア海軍の誇る空母「カヴール」である。後ろに控えるは「カヴール」とともに空母打撃群を構成する同じくイタリア海軍のフリゲート「アルピーノ」。2隻は巨大な東京湾観音像に見下ろされる中、ゆっくり北上を続け、海上自衛隊横須賀基地に入港した。横須賀基地に日米以外の空母が入港するのはきわめてまれであり、不肖・宮嶋が知る限り、英海軍の新型空母「クイーン・エリザベス」くらいで、イタリア海軍の「カヴール」の日本寄港はもちろん初である。

 もちろん艦船マニアも見逃すわけにもいかず、観音崎には木曜日早朝ということもあり、5人ほどしかいなかったものの、基地が見下ろせる高台にはマニアが鈴なりになっていた。

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©宮嶋茂樹

 いつもは「いずも」の指定席である逸見岸壁に接岸した「カヴール」である。その名はアフガニスタンの首都の「カブール」にちなんだわけでもなく、イタリア王国の初代首相の名を冠する。その威容は全長が236mにもかかわらず、海上自衛隊最大の護衛艦である「いずも」より大きく見えるのは飛行甲板を埋め尽くすF-35Bステルス戦闘機やハリヤーⅡ攻撃機だけのせいやない。艦首左舷にそびえるスキージャンプ台、これはF-35Bやハリヤーの発艦時の短距離可と燃料節約のためである。さらに艦首と艦尾ににらみをきかす76mm単装速射砲のせいもあり、さながら海に浮かぶミニ要塞の感である。

誇らしげな「カヴール」「アルピーノ」の両乗員

 接岸と同時にラッタル(はしご)がかけられ、上陸してくる「カヴール」「アルピーノ」両乗員も空母打撃群の一員のせいか、どこか誇らしげである。また乗員とともに乗艦している士官候補生が、この猛暑の下背負う黒いダブルの制服もイタリアらしいセンスをうかがわせる。

©宮嶋茂樹

「カヴール」の巨艦を背に逸見岸壁に整列するイタリア海軍空母打撃群司令官ジャンカルノ・チャッピーナ准将指揮下の「カヴール」艦長ミロス・アルジェントン大佐、「アルピーノ」艦長サルバトール・サントアンジェロ中佐以下両艦乗員、さらにジャンルイジ・ベネデッティ駐日イタリア大使を前にしての海上自衛隊第1護衛隊群司令の沢田俊彦海将補の歓迎スピーチは「ボンジョルノ、ピアチェーレ(おはようございます! はじめまして。)」から始まるという、モロ歓迎ムード満載であった。